【ここだけの話】BMW328i試乗会の巻
2月のある日、新型BMW3シリーズの試乗会が、神奈川県三浦の観音崎京急ホテルをベースに行われた。取材メンバーは番組DJの藤本えみり、番組でもおなじみのモータージャーナリスト石井昌道さん、そして番組Pのタカハシと中村カメラマンの4名で参加してきた。
試乗車は328iで4気筒ターボになった新型。それ以外のラインアップはまだ国内に導入されておらず、1グレードのみである。とはいえ、今後の3シリーズの中心となる一台だ。
試乗コースは特に決められていないので、時間内であれば、どこへ行ってもOK。今回は石井さんもジャーナリスト枠で試乗時間を持っていたので、番組の試乗枠とあわせて借りることにした。すると合計180分の試乗時間が得られ、3時間を使ってドライブテストできることになる。
「3時間って結構な時間ですね」と石井さん。本日のファッションはジーンズにジャケット、薄い紫色のストールを襟元に巻き、なかなかお洒落スタイル。サングラスを頭に乗せながらDJのえみりに向かって、ニコニコしている。
「石井さん、どこまでいけますかね?」と笑顔のえみりは、ブルーのワンピースに黒いコート&ブーツというウインタースタイル。撮影のため長時間外に放置されても寒くないような格好をしている。
試乗会と聞くとドライブを想像する人も多いかもしれないが、実際は、結構忙しく、インプレッションもワインディングや市街地、高速道路とシチュエーションを変えて運転する必要がある。さらに、撮影の時間もあるので、のんびりドライブ気分を味わうっていうことには、なかなならないのだが、今回は時間がたっぷりあるので、少しはドライブ気分に浸れるのだ。
「木更津の方まで行ってみますか?」とタカハシが提案し、千葉方面に向かうことに決定。ルートは横浜横須賀道路、首都高湾岸線、アクアラインというルート。千葉に渡ったら一般道を走ってインプレッションを取るということでスタートした。
「2.0Lターボで4名乗車という比較的、多く遭遇するケースだけど、さすがにパワー不足とか一切ないね」と石井さん。
「軽快ですか」とオレ、タカハシ。
「そう、アウトバーンの国だし、この程度の人数で力がないって感じたらプレミアムブランドとして成り立たないでしょ。それに、ドイツ人はデカイから同じ人数でももっと重いはず」
「そうっすね。200km/h以上で巡航できる道路を持ってる国ですからね。100km/hっていったらドイツの一般道の制限速度と同じですもんね」
「100km/hで1600rpmぐらいかな。随分と回転が抑えられているから燃費もよさそうだね」
「石井さん、このモデル1750rpmで最大トルクでますよ」とプレス資料を見ながらつぶやくオレ。
「そう。最近の欧州車の多くは、ターボを実にうまく使っていて、最大トルクの発生回転数を凄く低くしている。だから実用的にも、乗りやすいし、排気量をダウンしているデメリットをうまく消しているよね」
「排気量がちいさくなったんですか?」とえみり。
「そうダウンサイジングなんだ」と石井さん。
「ダウンサイジングってなんですか?」
「簡単に言えば、排気量を小さくしても大きな排気量と変わらない性能にしていること。つまり、328iだと今までなら2.5Lや2.8Lのエンジンを搭載していたけど、今回は2.0L。それでも、2.5Lや2.8L時代の3シリーズと変わらない走りができているということ。むしろ、低速がよくなった分、こちらのほうが乗りやすいよね」
「省エネ、エコってことですね」
「そういうこと」
用事はなかったが海ほたるSAに寄ってみた。
「海ほたるにこんなオブジェってありましたっけ?」とオレ
「どうかな・・・言われてみればあったような、なかったような・・何度も来ているけど、なかなか観光気分で周りを見ないからなぁ」と石井さん。
そうなんです。実はモータージャーナリストや編集者もそうだが、主目的がインプレッションや撮影だったりするので、関係のない場所は意外とスルーしていて、記憶が曖昧なことが多い。だから、試乗で頻繁に利用する箱根などでは、コーナーのRはもちろん、路面状況までインプットされているくせに、周辺のみやげ物店や観光スポットを知らなかったりするのだ。
「あれ、みなさん何度も海ほたる来てるんですよね」というえみりの質問には、「ごもっとも」というしかない。
千葉側へ渡ってから、車両の置き撮影をし、いよいよ番組で流すための音声収録をすることに。
「カメラのセッティングをするので、ちょっと準備させてください」と中村カメラマン。通称中カメ。
しばし、収録準備を待ち、その間にいろんな話をする。
「なんかシートの革がシワっぽくないですか?」とオレ
「高級なシートやソファってこんな感じが多いでしょ。パーンと張りのあるものは安物が多くて、座っても滑っちゃうソファはたいてい安い」と石井さん。
「なるほど。言われてみれば家具と同じなんですね」と知りもしないが、話を合わせる。
「新しい3シリーズはどうなんですか?」とえみりがこれまた、随分とざっくりとした質問を投げてくる。
「どうって・・・いですよ」と石井さん。
「このクラスはプレミアムセダンというカテゴリーで、良くて当たり前なセグメント。何かおかしなところがあるということはないんだよ。ライバルと言われるベンツのCクラスやアウディのA4なんかも同じで、いわば好みの世界なんだ」
「ふ~ん。じゃ、何をテストしているんですか?」
「まず、新しくなったものがあるから、その新しいものがちゃんと3シリーズのものとして、相応しいものかどうか?という点だろうね」と石井さん。
「3シリーズにそんなに乗ったことがないから、私には相応しいかどうか?なんてぜんぜん分からないですね」
「それわかったら、えみりちゃんひとりで番組できちゃうじゃん。僕、出番なくなるよ」
「お待たせしました。準備できました」と中カメの合図で収録がスタート。この模様は3/18放送になりますのでお楽しみに。
で、無事収録を済ませ、あとは観音崎の京急ホテルへ戻るだけだから、ドライバーチェンジ。えみりドライブだ!
前回、JAIA試乗会のとき、ドラポジが甘いことがわかり、今回は石井さんにチェックしてもらう。
「どう?こんな感じだとおもうけど、窮屈なところある?」と石井さん。
「いえ、なんかしっくりきています」とえみり。ということで出発。
ここで、何かしでかしたり、事件が起こればそれこそ語り継がれるのだが、実はキレイに運転しやがるのだ。
「わ~、運転しやすい。BMWっていいですね」とぬかす。運転しはじめてものの5分もしないうちに。
「3シリーズ運転するの初めてなんですが、すごい安心感があります。なんだろう、クルマが言うこと利くというのか、私の思うっているように動いてくれるから、ぜんぜん怖くないですね」ある意味BMWの本質的なところを、ズバッと言い当てている。センス良いのか?
「スピードも意識しないで出せるし、気が付くと速度オーバーしていますね。これ、すごい安心感があるからですね」と千葉の山中にあるワインディングロードを軽快にすっ飛ばしてくれる。本人は安心感でいっぱいなんだろうが、同乗している僕らは、不信感いっぱいだ。
海ほたるまで戻ってきたので、最後はタカハシがドライブ。
「ゆったり試乗してたから、時間やばくないですか?」と中カメ。
「ホントだ。すこし急ぎ目でかえりましょう」と石井さん。
タカハシも328iファーストドライブだが、すぐに気持ちよく、駆け抜ける歓びが味わえる。
でも、ちょっと気になることが起こった。
「石井さんステアリングっておかしな動きするときなかったですか?」
「ないよ。なんで?」
「なんか路面のうねりを越えるとき、少しハンドルが動くんですよね」
「そりゃ、動くよ」
「いや、そういう動きじゃなくて、タイヤの動きとは別の動きです」
「いやぁ、なかったな・・・」
「そうですか。今、アウトバーンの巡航速度じゃないですか、この速度域付近だけで感じたんですよ。でも、だからと言ってクルマが不安定に走るということはまったくないんですけどね」
という会話をしながらナビの残り距離&時間と勝負!しながら5分遅刻で無事?返却できたのでした。
後日ステアリングのことが気になり、AutoProveの編集長に話をしたところ
「ある一定の条件が揃ったときに出る症状かもな。他のジャーナリストは感じなかったんだろ?」
「はい。石井さんも良く分からないって。後日桂コボちゃんとも話をしたら『まったくそんなことはない』って言ってました」
「なるほどね。それはひとつには、走る路面と速度という簡単な条件すら試乗会では走行条件が一致しないから、他のジャーナリストが感じなかったということが起きても不思議ではないよ。それで、おそらく今度の328iはEPSapaを使っている上に、オプション設定のバリアブル・スポーツ・ステアリング(可変ギヤ比)が組み合わされている。
例えば、路面のワダチを越えたとき、当然タイヤの接地荷重が変わるだろう?そのとき、モーターが戻そうとするのか、切ろうとするのかわからないが、アシストが入るのは間違いない。そのアシストが可変ギヤの部分を伝わって、抵抗の少ないほうにパワーがかかることがあるんだ。つまり、タイヤを切る動きだと抵抗が大きいので、抵抗の軽いハンドルのほうを動かしちゃうんだ。
でも実際にタイヤが切れることはないので、クルマは直進状態を保ちずっと安定しているはずだ。以前、可変ステアリングが初めて採用された先代5シリーズ(2003年)のときにも、勝手にステアリングが動くと指摘されたことも確かにあったよ。だから、ドライバーだけが微妙に電動パワステのゲインを感じるということだろうな」
「なるほど。でもあの速度域はアウトバーンの常用域だから、どうなんでしょうね?」
「ドイツでの評価まではわからないけど、日本ではその速度でタイヤの荷重が抜けるなんていうのは特殊な環境だけだからな。第一スピード出しすぎだ。」
「そうですね、すみません」