【トヨタ 東モ】待望のFT-86はショー当日のお楽しみ。新車やコンセプトモデルも要注目だ
2011年12月3日に一般公開される今回の東京モーターショーにトヨタが取り組むテーマは、「FUN TO DRIVE AGAIN」だ。FUN TO DRIVEのキャッチフレーズは1980年代の半ば頃にトヨタが掲げてよく知られていたが、その後は次第に使用頻度が少なくなり、認知度も薄くなってし まった。今回は走りの質の向上を目指して復活させ、“AGAIN(再び)”・と付けたのだろう。
FT-86は2Lボクサー4を搭載するFRスポーツ
このキャッチフレーズは今回ワールドプレミアとなるFT-86のために選ばれた気がするが、肝心のFT-86はショーの当日までベールが被せられて いる。ただ、11月27日に富士スピードウェイで開催されるファン感謝デー「GAZOOレーシング・フェスティバル」に登場するという噂もあり、これは ニュルブルクリンクVLN4時間耐久レースに出場したクルマと予想される。
とはいえ、FT-86 のエクステリアはすでに何度も海外のショーに出展されたFT-86コンセプトそのもので、コンセプトモデルでは装着タイヤサイズが大径だったこと、フロン トグリルやバンパーが市販仕様と異なるといった程度だろう。もちろんニュルブルクリンクに出場したFT86は、市販モデルのほぼそのままだ。
エンジンはスバル製の水平対向4気筒2.0Lで、新世代エンジン、ロングストロークのFB20型をベースにボア・ストロークを 86.0×86.0mmとスクエアにしたもの。燃料噴射は直噴とポート噴射を併用するトヨタD4-Sとするなど、事実上の専用エンジンだ。その狙いは低中 速性能に特化したFB20型をより高回転・高出力型に変貌させるためで、最高回転数は7000rpm程度となる。予想される出力は180~190psレベ ルだ。
プラットフォームは新型インプレッサ用のものに手を加えたもので、サスペンションはフロントがストラット式、リヤはダブルウイッシュボーンで、イン プレッサとほぼ共通だ。フロント・ストラットのキャスター角が4WDのインプレッサとほぼ同等で、FR駆動としては小さいのが気になるところ。キャスター 角と側面視のホイールセンターオフセット量はFRモデルでのこだわり所でもある。
トランスミッションはアイシン製の6速MTと6速ATが設定される。コンセプトとしてはFR駆動方式の4座席クーペで、水平対向エンジンによる低重 心の走りがアピールポイントだが、走りにこだわったスポーツモデルなのか、往年のスペシャルティカー・ジャンルの再現なのか、これはマーケットが判断する ことになるのだろう。
いずれにして2012年春には発売されるので、今回の出展車は市販モデルそのものと考えていい。なお将来的には「86」はトヨタの新たなブランドにするというビジョンがあり、4ドア版やクロスオーバーまで展開されるという噂も流れているが、果たして・・・
いずれにしてもトヨタFT-86とスバルBRZは、今回の東京モーターショーの主役となることは間違いない。
近未来への提案となるFun-ViiとFCV-R
“つながるコンセプトカー”をキャッチコピーとするのが、この「Fun-Vii」。事前情報はイメージカット1枚の写真のみだが、名称から考えてテレマ ティックス、ITSを前面に押し出したネットとクルマのコミュニケーションをテーマにしたコンセプトモデルと思われ、今年4月に合意されたトヨタとマイク ロソフトの次世代テレマティックスを採用し、同時にトヨタとグーグルとの連携によるプレゼンテーションも盛り込まれているはずだ。
もう1台のコンセプトカー「FCV-R」は燃料電池車で、今回がワールドプレミアとなる。実用性の高いセダンタイプの次世代燃料電池車とされ、当然 ながら脱化石燃料に向けての方向性を示すモデルである。2015年から始まるとされる水素ステーションの大規模な設置に合わせ、市販化が計画されている ミッドサイズセダンという点がポイントだ。
パッケージングはエンジンルームにモーターやパワーコントロールユニットを配置し、床下中央に燃料スタック、リヤシート下とリヤシート背後に各1個 の70MPaの高圧水素タンクを置き、さらにその背後に電池を搭載するという現実的なもの。高圧水素タンクである限り、円筒形のタンク形状になるので、そ の格納スペースが燃料電池車で問題になるが、FCV-Rは2個にしているのがミソだ。
デザインは、リアリティレボリューションというコンセプトに合わせたダブルモチーフ・デザインを採用している。ボディサイズは全長4745×全幅1790×全高1510mmで、ホイールベースは2700mm。この数値を見ると、プリウスをベースにしていることがわかる。
プラグイン・プリウスのこれが市販バージョン
プリウスプラグインハイブリッド(PHV)は2009年末からリース契約のみで市場に導入されているが、日本初公開となる今回の出展モデルは2012年発 売に向けての改良版で、これが市販仕様と言える。トヨタはこのPHVをハイブリッド車に次ぐ次世代の環境車の柱と位置付けており、EVより安価であること を強調している。
性能的には現在のプラグイン・プリウスの燃費57km/L、EV走行距離23.4kmを上回るとされている。従来モデルよりリチウムイオン電池を小型化す ることで、ラゲッジスペースを403Lから440Lとプリウス同等レベルに拡大している。航続距離は3500km。ボディサイズは全長4480×全幅 1745×全高1490mmで、ホイールベースが2700mmとなっている。
FT-EVⅢはiQをベースにしたコンセプト
FT-EVⅢは近距離移動に適した超小型軽量パッケージのEVとしてワールドプレミアとなる。一見してわかるようにiQをベースにしたEVで、コンセプト としては市販できる状態に仕上げたシティコミューターEV。長い航続距離を求めず、小さな電池にしていることがポイントだ。
トヨタとしてはハイブリッド、プラグイン・ハイブリッドが環境対応モデルの柱としているため、EVはコミューター的な位置付けを明確にしている。販売の ターゲットも通勤用のセカンドカー、シニア層、法人&自治体ときわめて現実的である。したがって、ここ1年以内に発売されると予想できる。
1回の充電での走行距離はJC08モードで105km、充電時間は200Vで3時間。エアコンはヒートポンプ式を採用し、電池はフロアのセンタートンネル 部に搭載。スマートフォンを利用した充電制御なども行うことができる。ボディサイズは全長3110×全幅1680×全高1500mm、ホイールベースが 2000mmで、4名乗車となっている。
ヴィッツ・ベースで驚異の燃費を誇るアクア
小型ハイブリッド車のアクアもワールドプレミアとなり、ショーが終わった年内にも発売が予定されている。ベースモデルはヴィッツだが、アクアという 新たな名称が与えられており販売チャンネルもヴィッツより拡大されるはずだ。また海外では「プリウスc」という車名で販売を展開する。その意味でトヨタに とって世界戦略商品となるクルマなのだ。
アクアという車名は、水のような自由な広がりを意味するというが、より多くのユーザーにハイブリッドのメリットを提供すること、圧倒的な低燃費、低価格を訴求した小型ハイブリッドモデルで、トヨタでは次の10年の主流となる2020年のコンパクトカーと位置付けている。
ベースになっているヴィッツのボディを大幅に手直しし、全長は3995mm(+110mm=ヴィッツとの比較、以下同)、全幅は 1695mm(+0mm)、全高が1445mm(-55mm)、ホイールベースが2550mm(+40mm)となっている。室内のパッケージを工夫するこ とで、リヤシートの足元のスペースはカローラ並みとし、ラゲッジスペースも1クラス上を確保しているという。
デザインも専用で、ヴィッツとプリウスが合体した感じに仕上がっている。パワーユニットは1.5Lエンジン+2モーターハイブリッド。プリウスよりシステ ム重量が40kg軽量に仕上がっていることもあり、燃費はJC08モードで35km/L、10・15モードで40km/Lとなる。またパワーユニットを低 重心に搭載し、ハンドリング性能も1クラス上を目指している。なお、このアクアは関東自動車・岩手工場で生産される。
スマートモビリティシティ展示エリアにも注目
トヨタはほかに、東京モーター ショー会場の「スマートモビリティシティ2011」展示エリアにも出展する。モビリティと次世代充電パーク、家とクルマのエネルギーマネージメント、次世 代ITS(インフラ協調、安全装備、自動運転)の3つのゾーンで先進技術を紹介する。マイクロソフトの「Kinect(キネクト)」を使用して、ゲーム感 覚で近未来社会を体験できるコーナーも設置する。
またこのエリアには、2012年1月にトヨタホームから発売予定の充電サポートツール「H2V Manager(エイチツーブイ・マネージャー)」も出展される。これはプリウスプラグインハイブリッドや電気自動車の家庭での充電をサポートオしてくれ るアイテム。希望小売価格は5万2290円(税込み・工事費別)、これに標準的な充電機器を組み合わせた場合でも15万7500円(税込み・工事費込み) からという価格設定でも注目を集めている。