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【読めるラジオ】第242回放送『マクラーレン MP4-12C』


第242回


世界を知るジャーナリストだからこそ、

いつの時代でもスーパーカーの輝きは必要だと熱く語る


 

岩貞:ピーターさん…今週はスーパーカーを特集してお送りしていきたいと思います。今、エコがいろいろ言われているんですが、クルマの魅力って、やっぱり移動の道具というだけではないですよね。

 

ピーター:その通りなんです。もちろんエコはとても重要なんですけど、電気自動車とかハイブリッドとか、クリーンディーゼルとか。多くのメーカーは頑張って開発しているんですが、やはり人間には五感があるわけなので、その五感を刺激するような、訴えかけるようなものがないといけないと思うんですよね!

 

岩貞:絶対ですよね!

 

ピーター:特に耳とか心にフェラーリの音っていうのは伝わってくるでしょ? 70年代を代表する(スーパーカーである)ランボルギーニ・カウンタックやミウラとか。「ミニミニ大作戦」という映画がありましたでしょ?

 

岩貞:ありましたね。

 

ピーター:すごく有名な映画。最近リメイクされたのはあまり良くなかったんですけど…。ま、その話はいいとして。ミウラは最初のシーンに出てきて、エンジンとかかってくるBGMの良さ。それで最後にクルマが爆発するという、絶対忘れられないオープニングで、それを超えるようなオープニングはなかなかないんですけど、それこそがスーパーカーの魅力なんですよね。音とルックスですね!やっぱりすごく低くてワイドで、それでパワフルで、速くて、ハンドリングが良くて、なにより値段が高いというそれが、スーパーカー(の魅力)なんですよね。

 

岩貞:え~、え~。

 

ピーター:例えば一般車と比べると、なにが違うかというと楽器に例えると、エレクトロニックピアノがあるじゃないですか?

 

岩貞:電子ピアノ?

 

ピーター:(そう)練習ができてすごく便利なんだけど、それをスタンウェイのピアノに比べると、すごく手がかかるじゃないですか?高いし。でも(鍵盤に)指を置いた時に出てくる音が、心に響いてきて、全然違うんですよね~。それが一般車や普通の市販車とスーパーカーとの違いだと思うんですよね。それでそういう喜びを知ってしまった人たちが、やっぱりスーパーカーに乗りたいと思うんでしょうね。

 

岩貞:ピーターさんはどこで喜びを知ってしまったんですか?

 

ピーター:まず聞こえてくる音から入って、それからルックスですね。なによりも色気がないとダメなんですね。

 

岩貞:それは(ピーターさんが)いくつぐらいの時に?

 

ピーター:14才か15才くらいだったかな。その前から60年代のジャガーEタイプとかすごく好きで、良かったですよね~。なによりもルックスと音。実際、乗った時のハンドリングやコーナリングGがかかってくる時とか。それと高級感がないとダメですよね。

 

岩貞:そうですね。価格的なものもありますけど。

 

ピーター:そう。フェラーリとかランボルギーニとかポルシェもそうなんですけど、日本車にも(販売されていたクルマが)あるんですよ。ホンダのNSX。ちょうど20年前ですかね?

 

岩貞:もう20年ですか。すごいショック。

 

1990年に登場したホンダNSX。当時は納車までに数年待ちと言われるほどの人気を博した

 

ピーター:(笑)そうですよね。ボクも乗った時、日本もよく作ってくれな~って思ったんですけど、でも海外はすごい(ハイパワーの)スーパーカーを作っているわけですから、NSXは280馬力しかなかったわけで。

 

岩貞:その頃、馬力規制といろいろありましたよね。

 

ピーター:あったので、海外で販売されたものも280馬力しかなかったんですが、でも、エンジンや6速ミッションがすごく良かったんですよね。あとハンドリングも良くて、アルミ製のボディも非常に高く評価されました。

 

岩貞:専用工場まで作っちゃいましたよね。

 

ピーター:でも海外では、値段がモノにしてはちょっと高いかな、ていう(印象が)ね? 最初は成功したんですが、徐々に下火になっていってしまいましたね。最近では一番高く評価されているクルマはレクサスLFAなんですね。この前イギリスでフェラーリとLFAを比較したら、ドライバーたちは「トヨタはよくやってくれたね~、作ってくれてありがとう」とすごく高く評価していました。なにより音が良いっていうんですね。今までは日本のメーカーが作るクルマはエンジン音が、あまり心に訴えるものがなかったでしょ?

 

2009年の東京モーターショーで市販モデルが世界初公開されたレクサスLFA。最高時速は325km/hを超える

 

岩貞:日本が作るとどうしてもマジメにマジメにいっちゃって、官能的というには遠いところにあるっていうイメージだったんですが。

 

ピーター:そうですね。

 

岩貞:LFAはそういう評価ではないんですね?

 

ピーター:しかもハンドリングが良くて、道を走る戦闘機のようなルックスなんだけれども、V10エンジンも高く評価されています。もう1台高く評価されているのがニッサンのGT-R。これはスーパーカーなのか聞かれることもあるんですが、これはスーパーカーです! スーパーカーは低くてワイドで、しかもパワフルでハンドリングが良くて、値段が高いということなんですが、ニッサンGT-Rは1000万円くらいの価格なんですが、いわゆる一般的なスーパーカーと呼ばれているクルマよりも速いんですよね。0-100km/hが12年モデルで2秒8!

 

岩貞:(笑)

進化を続けるニッサンGT-Rの2012年モデル。最高出力550ps、最大トルク632Nmを発生させ、0-100km/h加速が2.8秒というパフォーマンスを誇る

 

ピーター:すごいでしょ。ゼロヨンが10秒8。10秒台っていうのは考えられない数字で、実際この前乗ってきたんですが、すごく良かった!

 

岩貞:そうですか。マクラーレンのお話を次のコーナーでお届けしたいと思います。

 

岩貞:さてピーターさん、いよいよマクラーレンMP4-12Cですが、こちら市販車ということですが、私でも宝クジに当たれば(買えるということですよね?)

 

ピーター:そうですよ! 乗れますよ! F1のファクトリーが作っている市販車なんですよ。だから乗れます! ただし…マネーがないとダメですね。

 

岩貞:価格が日本円で2790万円からということで。

 

ピーター:その通りですね~。でもそれだけの性能と魅力があると思うんですよね。ホントに素晴らしいんですよ。エンジンにしても、ミッションにしても、サスペンションにしてもすべて期待以上だったんですよね。

 

岩貞:簡単にスペックを紹介させていただくと、3.8L V型8気筒ツインターボエンジン。600馬力。600Nm。2シーターのミッドシップのクーペタイプということですね。

 

ピーター:そうですね。7速のデュアルクラッチが付いているんですけど、それも素晴らしいギアボックスなんですよね。0~100km/h加速も3.1秒とすごく速いです。

 

岩貞:はい。ものすごい速さですね。

 

ピーター:そうですね。このクルマで一番面白いところは、エンジンを独自開発したこと。実はマクラーレンは世界を飛び回って、適当なエンジンがないか探していたんだけれど、すごく(エンジンマウントの)スペースが狭いんですよ。そのスペースに入るだけのコンパクトで軽いエンジンとなると自分たちで作るしかないということになって、結局、F1の技術をフィードバックさせて自分たちで作ったんです。そのエンジンとミッションとの相性が、絶妙なんですよね! もう美味しい料理みたいな感じがするんですけど。

 

最高出力600ps、最大トルク600Nmを発生する3.8L V8ツインターボエンジンをミッドシップに搭載。マクラーレンによる独自開発で、F1で培われた技術をフィードバックさせている

 

岩貞:ピーターさんはワインがお好きですけど、お料理とワインのマリアージュみたいな感じ?

 

ピーター:もうその通り! このマクラーレンにいろいろな技術が付いているんですけど、ひとつは3モード(が選択できること)。ノーマルモード、スポーツモード、トラックモードと3つのモードがあって、そのモードによってクルマのフィーリングが変わってくるんですよね。アクセルの反応とか、ステアリングの反応とか、サスペンションの反応とかが全部違ってくるんです。ノーマルモードだと、こんなこと言っていいのかわからないですけど、メルセデスのEクラスと同じくらいしなやかな乗り心地。だからこれは、毎日乗っていられるスーパーカーなんですね。

 

岩貞:それはすごい。

3モードスイッチによる切り替えで、高級乗用車の優雅な乗り心地から、レーシングマシンのアグレッシブなドライビングまでセッティングを変更することができる

 

ピーター:だからアクセル踏むと、もちろん加速性能は良いんですけど、すごく丁寧にATのミッションがギアチェンジしてくれて、(そのことによって)なによりも乗り心地が良いんですね。もうひとつマニュアルモードがあって、パドルシフトで操作できるようになるんです。それでノーマルからスポーツに変えると、いきなりエンジン音がアグレッシブになってきて、より低音が効いた重厚感が出てきて、少しサスペンションが固くなって、ステアリングレスポンスが良くなるんです。トラックモードに変えると、スポーツカーがレーシングマシンに変身したような感じがします。

 

岩貞:表情が全然、変わってくるんですね。

 

ピーター:1台に3役というか、ジキルとハイドのような感じがします。

 

岩貞:今回はどこで試乗してきたんですか?

 

ピーター:イギリスのTop Gearという有名なサーキットなんですけど、実はTop Gearというと皆さん理解してくれると思うんですけど、BBC放送局が作っている世界一有名な自動車番組なんですけど、(この番組が使用しているサーキットなんです。)実はダンスフォールド・エアロドームという(空港に併設されたサーキットで)、ロンドンから西に40分くらいのところなんですけど、ここをマクラーレンは開発サーキットとして使っているんですね。

 

岩貞:そこでピーターさんは試乗してきたということですね。ここで音声レポートをお聴きいただきましょう。

 

 

【音声レポート】

 

「今トラックモードに切り替えたんだけれども、まず気づくのはクルマのレスポンス。ステアリングレスポンスとスロットルレスポンス。あとサスペンション。全部反応がレーシングカーのようにクイックになる。3速からの立ち上がり、トラックモードで…。素晴らしいエンジン音! ブレーキステアが働いて、スッとコーナーに入ってきて路面に食い付くような感じで(コーナーを)立ち上がっていく。こんなコーナリング性能は今まで体験したことがない…」

 

 

岩貞:ピーター・ライオンさんによるマクラーレンMP4-12Cの音声レポートをお聴きいただきました。ピーターさんやっぱり音が良いですね。

 

ピーター:音が良いでしょう! 海外ではフェラーリとよく比較されるんだけれど、フェラーリの「ピィ~ピィ~~ピィ~~~」っていう音と、マクラーレンの「ブルルッ~ブルブル~~」っていう音と全然違いますよね!(どちらも)ハートに訴えるものがあるんですね。(この音の違いが)イタリアとイギリスの違いなんじゃないかな。でもMP4に乗って思ったのはクルマ好きとして、期待以上に加速してくれて、期待以上にブレーキングしてくれて、特にブレーキステアの技術はコーナーに入ってもアンダーステアも出ず、スムーズに立ち上がってくれるんですね。コーナリング性能も非常に高くて、安定しています。期待以上に応えてくれたって感じがしますよね。

 

マクラーレンMP4-12Cの足元を支える大口径のブレーキキャリパー。コーナーの減速時には、安定した制動力を発揮する

 

岩貞:今回テストされたのは先ほどもおっしゃっていたんですけども、飛行場をベースにしたサーキットなんで、フラットでコーナーがどこにあるのかわからないくらい?

 

ピーター:(ゲームの)グランツーリズモで覚えたんですけど、このコースは再現されているので。あるコーナーの立ち上がりで、次のコーナーの入り口が見えなくて、ゲームで覚えてないと、次のコーナーの入り口がどこにあるのかわからない。やっぱり150km/hくらい出ていますか、ハンドル切ってからコーナーに気づくみたいな。そんな感じなんですよね。

 

岩貞:それでもしっかり反応してくれて、きちんと(コーナーを曲がってくれる?)

 

ピーター:その通りです。すごく安全なクルマなんです。

 

岩貞:スーパーカーなんですが、普通にも走れて、走りたい時はガッと行けるっていうのがホントに良いですね。

 

ピーター:その通りなんです。毎日乗っていられるスーパーカーなんです。乗り心地はホントに良いですね。

 

岩貞:さて、ピーターさん。もうエンディングなんですけど。

 

ピーター:残念だね。

 

岩貞:やはりスーパーカーというと、デザイン、インテリアの質感、そのあたりも気になるところなんですが。

 

マクラーレンMP4-12Cのコクピット。レザーやカーボンファイバーを惜しげもなく使い、高級感あふれる室内は、さすがにスーパーカーらしい演出だ

 

ピーター:よく海外媒体を見るとフェラーリと比較されて、MP4-12Cはおとなしいんじゃないかと言う声もあるんですね。でもボクが思うにはこれはイギリスのジェントルマンが作ったクルマなので、お行儀がいい。しかもこれは年は取らないと思うんですよ。フェラーリは流行がありますよね。インテリアもレザーがあってカーボンファイバーがあって、ステッチがすご~くキレイで、高級感があって良かったですよ~。マネーがあれば買いたいですよ!

 

岩貞:いっぱい稼いで(買って)ください。今度乗せてくださいね!(笑)

 

ピーター:はい、わかりました~(笑)。

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