【読めるラジオ】第239回放送『BMW 1シリーズ』
第239回
豪雨のサーキット試乗だから見えたBMWの神髄。ファンは必聴です!
岩貞:さて桂さん、今週はBMW1シリーズのご紹介ですが、フルモデルチェンジしましたよね?
桂:そうですね。数えると7年ぶりの2代目なんですけど、このクラス…日本でいうとシビックやカローラのクラスなんですけども、ほとんどがフロントエンジン、フロントドライブのFFなんですね。ところが、BMWの1シリーズはフロントエンジン、リヤドライブの…
岩貞:後輪駆動ですよね?
桂:そう。そのレイアウトをこのクラスで海外のメーカーも含めて、唯一FRなのは、BMWの1シリーズだけなんですよ。
岩貞:ほかのメーカーはどうしてFRにしないんですか?
桂:え~、まあ効率の問題だとか、室内が広く取れるとか、ほかにも展開しやすいとか、色々あると思うんですけど、やっぱりBMWはそこをズバッと、一本筋が通った、男らしくね、FRをつらぬいているというところは、ファンが多い要因でしょう。
岩貞:今回はフルモデルチェンジということなんですが、初代に比べてどのくらい変わったんですか?
桂:シャシーやエンジン、ミッションも含めて、すべてが新しいんですよ。ただですねぇ、見た感じは“あれ、どこが変わったの?”っていうぐらい、似てるっちゃ、似てるんですよ。でも、ですね。ボディサイズでいうと、全長は95ミリ大きいし、幅は15ミリ(拡大)だし、高さは40ミリ(アップ)だし、ホイールベースも30ミリ長くなっているんです。
岩貞:大きくなっているんですね?
桂:その通り。全体的に大きくなっているのは最近のドイツ車の流れで、安全対策を徹底すると、どうしても幅が広がったり…という部分があるんです。ただ見た目は変わっていないけど、(新旧を)並べると全然違うことがわかります。
岩貞:最近は環境対策もやり、燃費も上げたいというのに、クルマを大きくしなければいけないというのは、結構厳しい条件ですよね。
桂:うん、だから安全対策ということで、衝突した時のドライバー(や乗員)の空間を確保するとなると、大きくはなるよね。それでもクルマが重くならないようにしたりとか、排気量をダウンサイジングして燃費のいいエンジンにしたりと、各社頑張っているわけ。もちろんBMWもそうなんだけど…。
岩貞:ということは、エンジンはダウンサイジングですか?
桂:はい。1.6リッターの直噴ターボエンジンです。それが2種類あって、116iというのが136馬力、120iが170馬力。
岩貞:それって、なにが違って馬力がこんなに違うんですか?
桂:ターボエンジンなので、過給する圧力が違っているのと、それに合わせてコンピューターも変わっていますね。
岩貞:やはりこれは、同じエンジンで展開していくメリットというものがあるんでしょうか?
桂:同じエンジンで展開すれば、当然かかるコストが安く済みます。こうしたことはBMWに限らず、他社もやっていますよね。
岩貞:あと今回は、8速ATミッションですよね?
桂:そう。なんと8速ですよ。トラックじゃないかって…(笑)
岩貞:でも高級車系というか、大きなクルマでは8速もありますよね。でも(BMWは)、このサイズで8速なんですよね。
桂:だから、よくやりましたねぇと。ま、これは想像なんですけども、(先代だと)1速のギヤは思い切り引っ張っても40キロで自動的にシフトアップしたり、2速は70キロまでという感じなんですよね、このクルマは。で、この1速をよりローギヤにしてやれば、クルマが動き始める時の余分な力が少なくて済むはず。あまりスピードは出ないけど、1速→2速→3速という風に“タンタンタン”と軽い動きのままシフトアップしていった方が、燃費も少なくて済むというメリットがあるんじゃないかと思いますね。
岩貞:でも、おそらく(値段が)高いですよね、8速ATって?
桂:だからこれを今後、展開していくことによって、量産効果ってやつでコストも下がっていくと見越していると思います。あと、他社が6速から7速にいこうとしている時に、(BMWは一歩先に)8速だろうという記号性もありますよね。
岩貞:ちなみに、それって何速までいくんでしょうか?
桂:いやあ、もう9速というのが、トランスミッションのメーカーからは発表されていますから…。
岩貞:じゃあ、二桁になる可能性もあるんですか?
桂:まぁ、あるんじゃないですか(笑)。あと、アイドルストップが付いていて、本当に停止したと同時に“ストン”て、止まるんですね。かかる時も瞬時にかかるので、まったくロスなく止まる&動くができてると思います。それから、バイキセノンのヘッドライトで“カカッ”と明るいのが標準になりました。
岩貞:スポーツ走行するクルマは、前を早く認知するために明るくっていうのが鉄則ですよね。
桂:それだけじゃなくて、対向車なり人なりに、自分のクルマを早く認識してもらうためにも、こっちのライトが明るいというのは効果があるんですよね。
岩貞:自分を知らしめるためにも…ですね。
桂:それと後は室内ですけど、当然ボディが大きくなっているので、広がっています。とくに後席の足元が、狭いと不評だったところが広くなって、質感もよくなっています。
岩貞:ということになりますと、ライバルはどのあたりになりますか?
桂:え~と、日本車は先ほども(カローラやシビックと)言いましたけど、ヨーロッパではゴルフですとか、アウディのA3、メルセデスのAとB…というところじゃないでしょうか…。
岩貞:さて桂さん、BMWといえば常々“走りが素晴らしい”とおっしゃっていますけども、今回は“FRをつらぬいている”ことも先ほど強調されていました。FRって、どこがそんなにいいんですか?
桂:はい。クルマにはタイヤが4つ付いていますよね。FRだと、前輪はクルマを曲げることと止めるという役割を担当し、後輪は駆動する役目を果たします。これがFFだと、前輪に駆動する役目まで加わって、すごく仕事量が多くなってしまうんですね。(言い換えると)BMWだと(前輪と後輪で役割を分担しているので)タイヤの能力がすごくよく活きるわけですね。で、プラスして、BMWはクルマの重量のバランスもいいんです。前後で50 対50と、すごくいいバランスでクルマができています。ハンドルを切った時(の前輪)に、駆動するという余計な力が入らないので、曲げることだけにタイヤを集中できるわけですね。で、クルマの重量バランスもいい。ということが、走りがいいと言われるゆえんなんですね。
岩貞:走りがわかる人にとっては、たまらないと…。
桂:そうですね。ま、これはもうFFとFRを乗り比べれば、違うものだということは、よくわかるんですけどね。
岩貞:はい。ところで今回は、サーキットで試乗してきていただいたんですよね?
桂:そうなんです。一応サーキットをベースに、一般道も走ってよかったのですが、路面状況というか天候があまりにもひどかったもので、結局外には出ませんでした。
岩貞:ということで、袖ヶ浦フォレストレースウェイを桂さんに思い切り走ってきていただきましたので、その音声レポートをお聞きください。
【音声レポート】
桂:これ、普通のサーキット走行だと中止になる雨ですね(笑)。でも、オーバーステアにならないように操縦性を決めているのが、よ~くわかりますね。こういう滑りやすい路面ですと、クルマの特性というのは本当に露(あらわ)になるんです。例えばこういう横Gがかかりながらブレーキングというところは、すごく不安定になるんですけど、ならないですね。こういうところで、BMWの良さですけど、曲がるタイミングとアクセルの加え方で、どうにでもなる。自分が思った通りにクルマがコントロールできるというところが、BMWのすごさですね」
岩貞:桂伸一さんによるBMW1シリーズの音声レポートをお聞きいただきました。笑いがこぼれていた中にも、途中“ドドドドッ~”という音が入っていたんですが、なんだったんですか?
桂:あれはですね、クルマが横に滑っている音ですね。
岩貞:いわゆる、ドリフト?
桂:はい。これはですね。シフトレバーのところに、クルマがスリップしてるようなマークのスイッチがあるんですけど、ここを3秒以上押し続けると、DSCという車両安定装置が完全にオフにされるんですよね。
岩貞:(DSCとは)横滑り防止装置ですよね?
桂:そうです。そうすると、クルマの本当に純生の性能が出ちゃうんですよね。で、そういう状況で乗っていて、例えばコーナーにハンドル切って入っていきながらブレーキを踏むっていう、すごく不安定になりやすい状況の時でも、ちゃんとリヤは踏ん張って、不安定にならないように頑張っているんですね。
岩貞:はい。
桂:で、そういう安定性が確認できたので、じゃあ踏んだらどうなるかと、ハンドルを切りながらアクセルと“ガバチョ”と踏むと、さっきの“ドドドドッ~”となったわけ。
岩貞:でも、そうなった時に、その中でも微妙に操作をされているわけですよね。その操作がしやすいと?
桂:あのね。本当にリヤが今、こういう風に流れているから、前輪=ハンドルはこう操作しなきゃと思う前に、ハンドルがそっちの方向に向こうとしてるんですよ。
岩貞:クルマの方が?
桂:そう、クルマ側が…。だから、ハンドルに手を添えながらの、いわゆるカウンターステア=逆ハンが、すごく当たりやすいんですね。クルマがそういう方向に導いてくれるみたいな…
岩貞:それって、私のレベルでも感じられそうなことですか?
桂:逆にこれだけ雨が降っていて、速度が低いところでも、滑らせようと思ったら滑るので、そういうところで体感すると、“すごいわね!”って、わかると思いますよ(笑)
岩貞:皆さん、ぜひトライする時は危険のないように、サーキット走行でお試しいただければと思います。
桂:そうですね。
岩貞:さて1.6リッターのエンジンですが、トルクやパワー感はいかがでしたか?
桂:まず116i に乗ると、これが136馬力ですけど、これで十分だなと思うんですよ。エンジン音もさすがで、直列4気筒でもメーカーによってはガサツな音もあるんですけど、BMWのこれはすごくバランスの整ったサウンドを聞かせてくれます。だから116i で十分なんですけど、これは120iに乗るまでの話。120iに乗ると、やっぱりパワーがあって、こっちの方が面白いかなと…。後は予算との兼ね合いですかね。
岩貞:はい。で、これはどういった方にお勧めしたいですか?
桂:こういうクラス、Cセグメントって言いますけど、この中でほかのモデルとは違う操縦性が欲しいとか、特徴あるクルマが欲しいという方ですね。そういう人に…
岩貞:ぜひ、FRの走りを楽しんでいただきたいと?
桂:そうですねぇ。
岩貞:今日ももうエンディングなんですが、桂さん…
桂:はい。早いですねぇ。
岩貞:本当ですねぇ。あの…、先ほどの音声レポートなんですけれど、サーキットを全開で走っている時の桂さんって、本当に楽しそうでしたね?
桂:ふふふ(笑)。あのねぇ、クルマを意のままに操れる楽しさがすごく感じられたからでしょうね。本当に操りやすいっていうのが、従来のクルマがちょっとステアリングが重かったりするんですけども、そこもパワーステアリングを変えてすごく軽くなったんですね。前のクルマは女性から、そこが不評だったらしいんですよ。女性は重要ですから、(新型の1シリーズは)女性にもすごく扱いやすいクルマになっていると思うんですよね。
岩貞:それは、とっても嬉しいと思います。今後の1シリーズって、どうなっていくんですか?
桂:どうなるんでしょうねぇ。まぁ、先代でいうと2ドアのクーペがあったり、2ドアのカブリオレがあったりしましたから、そういう展開になってもおかしくはないですよね。
岩貞:また、それも女性に受けそうですねぇ。
桂:受けると思いますよ(笑)。