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【読めるラジオ】第244回放送『東京モーターショー 2011』


第244回


近未来の自動車像とテクノロジーを予感できるのが、今回の東京モーターショーの美味なポイント

 

 

岩貞:さて、石井さん…今日は東京モーターショーについて、うかがっていきたいと思います。2年に1度の東京モーターショーが、いよいよ開催されましたね。

 

石井:そうですね、ボクも地元のモーターショーということで、テンション上がってますよ!

 

岩貞:すごい気合が入っています(笑)

 

石井:規模は決して大きくはなんですけども、かなり見ごたえのある内容になっていますね。

 

岩貞:そうですね、私的には幕張から東京になったので、すごく近くて、電車の便もよくて生きやすいと(感じました)。

 

石井:そうですね。もっともっと多くの人に行ってもらいたいですよね。

 

岩貞:そんな中、世界中のモーターショーをご覧になっている石井さんから見て、今回の東京モーターショーをどういう風に思われていますか?

 

石井:見ごたえがあるというのはまずひとつ、出展車両が結構充実しているんですよね。

 

岩貞:数は決して多いわけではないんですよね。

 

石井:そうですね。モーターショーってコンセプトカーの(ように)あまりに未来的なクルマが多いと、ちょっと現実感がなくてつまらないじゃないですか。逆にもう売っているクルマとか明日発売するクルマばかり並べて現実路線にすると、これもまた夢がなくてあまり面白くないんですよ。

 

岩貞:そうですね。

 

石井:今回の東京モーターショーはその辺のバランスが、素晴らしく良いんですよね。なんか来年後半、あるいは2~3年後あたりに、クルマを買い換えようかなっていう目線で見ると、ホントに面白いんですね。

 

岩貞:良いクルマがたくさん出ていますよね。

 

石井:そうなんですよ。で、その理由をいろいろ考えていたんですけれども、燃費規制、あるいはCO2排出量規制というものが、ヨーロッパ、アメリカ、日本あたりで、2015~2016年あたりでビシッと来るわけですよ。

 

岩貞:かなり厳しいですよね、これ。

 

石井:そうなんですよね。で、これはもう数年前から自動車メーカーもわかっていたことで、ここに照準を合わせてクルマを開発したり、商品の出すタイミングなんかを決めているんですね。クルマって大体5~6年でモデルチェンジするじゃないですか。そうすると2015年あたりに向けて、これから出てくる新型車っていうのはみんな燃費規制などをにらんだクルマなんですね。

 

岩貞:ものすごく動いていますよね、いろんなものが。

 

石井:そうなんです。だから次世代のパワートレインとか、そういうものをどんどん投入してきていて、もしかしたら前の世代はある程度、20世紀をひきずってきたようなクルマたちで、ここでガラッと新世代に切り替わるタイミングなんですね。だからモーターショーで見られるクルマたちが、どれも気合が入っています。あと燃費さえ良ければ、良いってもんじゃないじゃないですか。みんなどのメーカーもある程度、燃費が良くなるので、逆にここは魅力をプラスしなきゃいけないっていう気合がメーカーに入っているんですよね。だから、ボクが見ても「これ欲しいな」とか、「次これ買おうかなぁ」っていう目で見ちゃうんですよね。

 

岩貞:今年の東京モーターショーは、ちょうど面白いタイミングに当たったということですか?

 

石井:もうまさに、その通りなんですよ。ホントに恵まれていると思います。

 

岩貞:もうひとつは、どうしても海外のモーターショーと比べてどうなのかな? というところがあって、特に中国がすごく(気になります)。

 

石井:そうですね。(マーケットとしては)日本の3倍くらいになってきていますから、当然、海外のメーカーなんかは中国に力を入れますよね。

 

岩貞:同じ時期にちょうど(広州)モーターショーが開催されていて、そことの比較が気になるんですけれども。

 

石井:もちろん販売上では中国は重視しなくてはならないんですけれども、どちらかというと、中国の特に広州のモーターショーは現実路線なんですよ。だから、すぐ売れるクルマとかを出してきているんで、(比較すると)東京モーターショーはもうちょっと先進的ですよ。

 

岩貞:なるほどね。そんな中で、石井さんが気になった注目のクルマってどの辺りになりますか?

 

石井:いっぱいありすぎて難しいんですけれども、ボクはランドローバー…レンジローバー・イヴォーグというクルマがあるんですけれども、SUVの新しいモデルですでに色々なモーターショーで出ているんで、好きな方は写真は見ていると思うんですよ。だけどこのぶっ飛んだスタイリング !? これはぜひ、自分の目で実車を見て欲しいです!

 

レンジローバーのイヴォーク。斬新なスタイリングが特徴の新型SUVだ

 

 

岩貞:やっぱり写真と違います?

 

石井:違いますね、迫力がね。よくこんな飛んだデザイン…コンセプトカーかと思ったら、ほとんど市販車なんですよ。これを来年の東京で乗っていたら相当格好良いと思いますよ。

 

岩貞:気になっていますね(笑)

 

石井:なってます(笑)

 

岩貞:そのほかはどのあたりが?

 

石井:同じイギリス車でジャガーのXKR-Sとかですね。スポーツクーペあたりも気になっています。

 

ジャガーXKR-S。ジャガー史上最もパワフルでエレガントなスポーツカーと噂されている

 

 

岩貞:私的には(メルセデスの)Aクラスとか、あとは、VWのビートル。これがフランク(フルトモーターショー)で石井さんご覧になってきて、すごく良かったって言われていたのが、やっと東京で実車を見られるって楽しみにしていました。

 

 


左、次期メルセデス・ベンツAクラスのコンセプトモデル。右、フォルクスワーゲン(VW)のザ・ニュービートル。写真は、ギター&アンプメーカー“フェンダー”とのコラボモデル「ザ・ビートル・フェンダー」

 

 

石井:この辺がさっき言った、来年か再来年あたりにクルマを買い換えようかな目線で見ると、すごく気になりますよね。ヨーロッパ車も、コンパクトカーに力を入れるようになっているんですね。燃費規制のこともありますし。だからこの辺のビートルとかメルセデスのAクラスも、次世代には相当気合が入っているんですよ。

 

岩貞:なるほど。次世代というとですね、プジョーの3008、これがハイブリッドなんですが、しかも…

 

石井:ディーゼルですよね? プジョーも今まであまりハイテクなパワートレインが見えて来なかったんですが、なんとディーゼルハイブリッドで、一気に飛び越してきましたよね。これどうなんでしょ…日本で売るのかどうか…っていうところなんですが、フランス車も相当環境性能も良くなって、乗りやすくなってきましたよね。おそらくディーゼルだけではなくてガソリンのハイブリッドもできるんで、プジョーは今後、期待じゃないですかね。

 

岩貞:はい、わかりました。

 

トヨタの「86(ハチロク)」。今回の東京モーターショーの最大のニュースで、世界からの注目度も相当に高い

 

岩貞:さて、石井さん、今回の東京モーターショーの主役は「ハチロク」でしたよね~。

 

石井:そうですね、トヨタのハチロクと、スバルBRZ。これ共同開発なんですけれども、スポーツカーとして注目モデルですね。今までのスポーツカーとなにが違うかっていうと、(今までだと)スポーツカーはモデルチェンジしたら速くしなくてはいけないみたいな(イメージで)右肩上がりにずーっときていたものが、価値観をガラッと変えて、逆に原点回帰するような、運転の楽しさをもう一度、取り戻しましょう、というようなクルマなんですね~。

 

トヨタとの共同開発で誕生したスバルのBRZ。市販モデルはこの東京ショーが世界初公開となる

 

岩貞:考え方が変わると、クルマの雰囲気もだいぶ変わってきますよね~。

 

石井:そうですね。岩貞さんは、見てどう思いました?

 

岩貞:いや~、私もいわゆる昔のハチロク世代なので、なんか懐かしい感じもちょっとしました。

 

石井:なるほど、ボクはですね、デザインなんかもこれは好き嫌いが分かれるかなと思うんですよね。すごく良いっていう人と、なんかピンと来ないっていう人がいて、その辺が逆に面白いと思います。

 

岩貞:いろいろ意見が分かれた方が、こういう尖ったクルマはいいですよね。ちなみに石井さんはどっちなんですか?

 

石井:え~…(クルマを)いじりたいなっていう感じです。要するに、なるほどこういうベースが来たかと思ったら、ホイールはこれに替えて、ウイングとかエアロパーツも付けてみようかな、みたいな想像力がかきたてられるんですよね。

 

岩貞:ということは当然、色々な情報がいっているパーツ屋さんとかは、力を入れて開発していますよね。

 

石井:そうですね。ここんとこ皆さんあまり元気がなかったかと思うので、このクルマだったらいけるかもしれないという機運はありますよね。

 

岩貞:石井さん、プロトタイプに試乗してこられたんですよね?

 

石井:そうですね。これ水平対向エンジンじゃないですか? だから重心が低いんですよね。コーナーでハンドル切っていくとノーズの軽さみたいなものがすごくありますし、意外とステアリングから伝わってくるものがしっとりしていて、良い部分はあります。ただ、ボク的にはサスペンションのセッティングとかも、ここもちょっと(セッティングを)変えたいなというのもあるんですよ。

 

岩貞:それって、もしかしてわざと残しているんですか? いじるために。

 

石井:そうかもしれないですよね。エンジニアの方にそういう風に言ったら、「それで良いんです」、と。これはキャンバスなんだ、みたいな言い方ですよね。

 

岩貞:なるほど。

 

石井:このクルマは完成品として出しているわけではないと…。もちろん、このまま乗れますけれども、これをどういう風に楽しんでもらうかはユーザー次第だ、というようなクルマなんですよね。

 

岩貞:そういうところは、昔から伝わってくるクルマ好き世代の楽しさが感じられるところですね。

 

石井:そうですね。色々と歴代面白いクルマがありましたけれども、例えばオーナーズクラブがすごく多くできるようなクルマって、やっぱり、キャンパスカーみたいなのがあるんですよ。

 

岩貞:ありますよね。例えばミニとか、そういうクルマってほんとそうですよね。

 

石井:だからメーカーの押し付けじゃなくて、ベースを提供しますっていうところが面白い。それともうひとつ、好き嫌い分かれるって言ったじゃないですか? こういったクルマがトヨタから出てくるっていうのは実に興味深いと思っています。

 

岩貞:それは(なぜですか?)

 

石井:日本の自動車メーカー、特にトヨタは大きいですからクルマを作る時に、色々な人の意見の合議制でクルマができてくるようなイメージがあるんですよ。逆にヨーロッパなんかは強いリーダーシップを持つような人がいて、その人が引っ張って、ある意味わがままなクルマが出てくる。その方が個性は強いんです。

 

岩貞:そうでしょうね…。

 

石井:日本の自動車はホントに80点以上の優等生が出てくるんですけれども、どこかちょっと個性がない。

 

岩貞:おりこうさんタイプになってしまうと…。

 

石井:そうなんで。いろいろな意見が入って丸くなってしまうということなんですけれども、ハチロクの場合は嫌いな人はいいです…好きな人に乗ってください…というような考えで作っているところが新しいですよね。

 

岩貞:トヨタにしては随分と思い切ったコンセプトできたということですよね。

 

石井:思い切っていますね。今までのやり方では、スポーツカーが永続的に売れる環境にはならないということでしょうね。

 

岩貞:なるほどね。あと、今回スバルのBRZと共同開発ということで、スバル・ブランドでも出てきますよね?

 

石井:そうですね。

 

岩貞:違いは?

 

石井:基本的なハードウエアは一緒です。デザインも変わりません。ただ、伝えて聞くところによりますと、やっぱり、トヨタにはトヨタの…スバルにはスバルのプライドがあるじゃないですか?

 

岩貞:ありますね。

 

石井:だから変えられる部分。例えばサスペンションのセッティングなんかは、かなり変えようとしてやっている…という風に聞こえてきます。

 

岩貞:楽しみですね。

 

石井:ボクもハチロクのコンセプトは乗ったんですけれども、BRZ(はまだなので)にも早く乗ってみたいんですよ。

 

岩貞:あと国産車というと、ホンダとか他のメーカーからも色々と出てきている注目車がありますね。

 

石井:いろいろ噂があって、ホンダは昔あったビートっていう軽自動車がありましたよね? これの次期モデルを出すんじゃないかと言われていたんですが、これがふたを開けてみれば「EVスター」というクルマでした。

 

岩貞:EVスターというからには電気自動車?

 

石井:電気自動車です。軽自動車(サイズ)ではなくて、もう少し大きいんですよね。でもオープンカーでスポーツカーですから、しかもすごく速いクルマなんじゃなくて、手の内に収まるようなクルマだと思うんですよね。

 

岩貞:やっぱりハチロク同様、乗って扱って楽しい(クルマなんですね)。

 

石井:全部が原点回帰というか、昔の良さを取り入れた気がします。

 

岩貞:あとマツダが、結構動きがあるみたいですね。

 

石井:そうですね。ずっとこの番組でもやってきたスカイアクティブテクノロジー。いよいよこれが全部入って、しかもデザインもみんな新しくなってますね。

 

岩貞:楽しみですね。

 

石井:SUVのCX-5。これはすぐ発売されますし、あとTAKERIというセダンがありましたよね? これはたぶん次期アテンザと言われています。

 

岩貞:それはチェックをしていく必要がありそうですね。

 

左、マツダCX-5。右、マツダのコンセプトモデル「雄(TAKERI)」。次期MAZDA6(アテンザ)のスタディモデルと言われている

 

 

岩貞:石井さん、今年の東京モーターショーは技術的なうねりというか、そういったパワーが感じられて面白いですね。

 

石井:そうですよね。いろいろな要素があるんですけれども、やっぱり日本は海外から注目されているんだなっということを実感しました。(実はショーの)ちょっと前に、アウディの「イートロン」という電気駆動のコンセプトカーなんですけれども、このメディア向けの試乗会をわざわざ日本でやったんですよ。

 

岩貞:それは世界に先駆けてということで。

 

石井:そうです。ヨーロッパじゃなくてわざわざ日本で。しかも箱根ターンパイクを貸切でした。

 

岩貞:なんて贅沢な。

 

石井:なんでわざわざ日本に来て試乗会をやったのかとアウディに聞いたら、日本は10年前からハイブリッドを売っているし、EVに関しても先進的だと。日本で起きている現象が数年後のヨーロッパやアメリカで現われると。だから日本に来て(試乗会)をやることに意味があるんだという言い方をしていましたね。

 

岩貞:やっぱりそうですよね。昔ハイブリッドカーのプリウスが出た時に、ヨーロッパとかアメリカはちょっと「えっ?」っていうところがあったんですけれども、結局受け入れていますよね。

 

石井:そうなんですよね。あとカーナビなんかも、日本の普及率は凄いですから…。

 

岩貞:今、もうだいぶ付いてきていますよね。

 

石井:そういった意味で海外のメーカーから見て日本は、非常に注目すべき市場なんですね。量としては以前より少なくなってしまったんですけれども、質がまったく違う。ここでしかわからないことがあるっていうことなんですね。

 

岩貞:なるほどね。ということは、今年のモーターショーの注目であるハチロクの動きも、かなり気にしているかもしれないですね。

 

石井:そうですね。

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