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【読めるラジオ】第233回放送『スペシャルコメンテーター:ピーター・ライオンさん』


第233回



 

日本をベースに活動して23年。今後も情報や文化を世界に紹介していきます!

 

岩貞:今週は国際モータージャーナリストのピーター・ライオンさんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

 

ピーター:よろしくお願いします。

 

岩貞:私とピーターさんはかなり長いお付き合いをさせていただいていますね?

 

ピーター:ほぼ10年?じゃなくて、もう20年になるんじゃないですか…。

 

岩貞:そんなになりますか !?

 

ピーター:ねー、長いねぇ(笑)

 

岩貞:この番組をお聴きのみなさんには、ちょっと間が空いてしまっているので、改めて、ピーターさんの自己紹介をお願いしたいんですが?

 

ピーター:はい。まず、ボクはオーストラリア出身で、西オーストラリアのパースで生まれ育ったんですね。25年くらいそこで暮らしていたんですが、大学で国際政治と日本語を勉強して、慶應大学に1年留学したんです。それで一度オーストラリアに戻って、メディアコーディネーターという仕事をやっていました。日本は当時80年代後半のバブル時代で、日本のいろいろなメーカーや媒体や、お金がいっぱいあったわけで(笑)、だから海外でいろいろな番組つくったり、いろいろな媒体の特集を組んだりして、その時、某日本の媒体がパースに来て、ボクがメディアコーディネートをしたんです。そこで、「日本に来てジャーナリスト活動ややればいいんじゃないの?」(と誘われて)、クルマに興味があったんで、それで翌年に日本に来て、88年からモータージャーナリストをやるようになりました。今は、活動の幅を広げてオーストラリア、アメリカ、イタリア、ドイツ、イギリス、南アフリカ、日本のそれぞれの自動車媒体に、(記事を)書いています。

 

岩貞:私、凄いと思うのは、もちろんイタリアとかイギリスとかの媒体には英語で書いているんだけど、日本の媒体に日本語で書いていますよね?

 

ピーター:日本語で書いていますよ。ま、ちゃんとした原稿書けるまで、時間かかったんだけど(笑)。ちゃんとした文章書けるようになったのは、もちろんオーストラリアの大学でたくさん日本語を勉強したんだけれども、やっぱり、雑誌に書くとなると違う日本語だから、それを覚えるのに5年くらいはかかりましたね。

 

岩貞:やっぱりそれは、仕事をしながら一生懸命、勉強していくんですか?

 

ピーター:そうそう。で、一番難しいのはやっぱり、「て」・「に」・「を」・「は」。

 

岩貞:(笑)「て」・「に」・「を」・「は」ですか…。それ、日本人でも難しい(笑)

 

ピーター:「に」と「て」が難しいかな。あと、「は」と「が」が難しい。

 

岩貞:あと、ピーターさんがおっしゃっていたのが、「病院(びょういん)」と「美容院(びよういん)」で違ってくる?

 

ピーター:そう! あとですね、よく外国人が間違うのが、「情勢(じょうせい)」と「女性(じょせい)」。

 

岩貞:なるほど…(笑)

 

ピーター:「アメリカの“じょうせい”はねー、カワイイんでしょう?」とか…、違うんだよ!(笑)

 

岩貞:(笑)そういうことを、いろいろ勉強されていたわけですね?

 

ピーター:そうですね。88年に日本に来て、それから23年間、日本でジャーナリストをやっています。

 

岩貞:日本はどうですか?

 

ピーター:(昔に比べて)随分、変わったねー。最初はやっぱりバブルだったんで、割と仕事がしやすかったんだけれど、どんどんいろんな意味で難しくなってきて、それで今、それに合わせて(仕事を)やっているんですが、今、円高だし…。大変だけど(笑)、でも日本での仕事は楽しいね! 日本の自動車文化を海外に紹介するのは、楽しい仕事です。いつも、いろいろな人に聞かれたりするんだけれど、「日本の自動車業界はどういうふうに(周りから)見られているの?」って聞かれるので、結構みんな興味あるんですよね。

 

岩貞:日本にいると、日本のことしかわからないので、やっぱり周りからどういうふうに見られているのかな? っていうの気になります。

 

ピーター:例えば日本から唯一紹介された(海外に輸出された)モータースポーツというか、自動車文化ってなんだと思いますか?

 

岩貞:え !? 日本から?

 

ピーター:日本から輸出された自動車文化。ひとつしかないんです、実は。

 

岩貞:え !? なんですか?

 

ピーター:ドリフト!

 

岩貞:おーおーおー。

 

ピーター:今、各国でドリフト大会が有名になっていて、日本の「ドリキン」こと土屋圭市さん。

 

岩貞:ドリフトキングの?

 

ピーター:彼もすごく有名なんです。

 

岩貞:っていうことですね…。

 

ピーター:もうひとつ忘れてはいけないのが、ポリフォニーデジタルの「グランツーリズモ」というゲーム。これもひとつの自動車文化だから、「ドリフト」と「ゲーム」のその2つですね。

 

岩貞:ピーターさんご自身もレースをやられるんですよね?

 

ピーター:うん、やりますよ。

 

岩貞:書くだけじゃなくて!?

 

ピーター:そう、10年くらい前から、マツダのロードスターパーティーレースに出ています。4時間耐久のレースも年に1回やっているんだけれど、実は、この直前にもあったんですが、10年間やって初めて表彰台に(上がれました)!

 

岩貞:おめでとうございます!

 

ピーター:準優勝!

 

岩貞:そのレースには、わがTHE MOTOR WEEKLYのチームも出ていて。

 

ピーター:皆さん、いましたよ(笑)

 

岩貞:ちょっと成績が、振るわなかったので…。その模様は来週詳しくお届けするとして。それ以外にもニュルブルクリンクのレースにも出られていますよね?

 

ピーター:幸いにもレクサスとコンタクトが取れて、レクサスISFという5リッターV8の8速ミッション搭載車で出場することができました。ボクは「ワールドカー・オブ・ザ・イヤー」というところで会長もやっているんだけれども、そのチームを結成して、日本の優秀なドライバーである松田秀士さんと、グランツーリズモのプロデューサーである山内一典さん、それとイギリス人ドライバーに声をかけて、4人で臨んで、2009年にクラス優勝。2010年にクラス4位を果たしました。

 

岩貞:ピーターさんは日本に住んでトータル何年になるのでしょう?

 

ピーター:25年。ちょうど人生の半分。あ! これで年齢がばれた !?

 

岩貞:(笑)もう半分メンタリティーは日本人になっちゃうものですか?

 

ピーター:ある程度ならざるを得ないと思うんですよね。やっぱり日本は独特の文化があるから、それにある程度慣れないと暮らせないと思うんですよね。

 

岩貞:ベースは日本に置いていながらも、それこそ年間何回もイタリアに行かれたり、イギリスに行かれたりするんですよね?

 

ピーター:そうですね。ジュネーブやフランフルト、アメリカだとデトロイトやニューヨークなどのモーターショに行ったりしています。この前はカリフォルニアに行って、フィスカーカルマ(http://www.fiskerautomotive.com/en-us)というラグジュアリーの電気自動車に乗ってきました。来年、日本に来るんじゃないでしょうか?

 

岩貞:そんなピーターさんにとって、日本のクルマというのはどんなふうに映っているんですか?

 

ピーター:んー。良い質問ですねー! まずは、日本車は信頼性が高い。これは全世界のユーザーからの見方で、信頼性が高くてコストパフォーマンスが非常に高い。そして質感やつくりが良い。日本車を買ったら壊れないだろうということで、日本車を買うユーザーがいるわけですね。ただ日本のメーカーにお願いしたいのは、もうちょっとデザインを頑張ってほしいんですよね…。

 

岩貞:(笑)デザインはダメですか?

 

ピーター:ダメじゃないんだけれど…、ちょっとパッションとか、感動するエモーションとか、情熱的なものを感じないんですよね。最近では、欧米で話題になっているクルマが、トヨタとスバルが共同開発しているFT86というクルマ。これは非常に期待されている!デザインはトヨタヨーロッパが担当したでしょ? スバルがエンジンとミッションとサスペンション、シャシーを担当していて、スバルがつくった初のFR。オーストラリアにいるボクの弟もすごく買いたがっています! イギリスのボクの同僚も乗ってみたいクルマのナンバー1!

 

発売が待ち遠しいFT86。欧米でも話題になっている。

 

岩貞:デザイン的に(日本車は)パッションがないとおっしゃっていましたけど、このクルマのパッション度はどうですか?

 

ピーター:すごく良いと思う。なぜかというと、十分パワーはあると思う。180馬力以上をターボを付けないでNAで出してくる。そのクルマがデザインも良くて走りも良い。しかもコストパフォーマンスも高いということで、各国で人気が出るんじゃないかと読んでいるんだけれど。あと、海外で注目されているのは、日産の電気自動車であるリーフとか、あとはマツダの再来年(?)出てくるであろう次期ロードスターとか、あとローターリー! そして、ホンダが小型スポーツカーを見直していること。それと、V8のNSXの後継車を出したいと社長がおっしゃっていました。そういうスポーティなクルマ、感情があふれる、乗って楽しい、乗っておもしろいクルマが注目されていますね。残念ながら日本で人気のミニバンなんかは人気ないですね。

 

岩貞:では、日本が得意としているハイブリッド系はどうですか?

 

ピーター:ハイブリッド系はアメリカでは注目されている。プリウスやインサイト、CR-Zはかなり売れている。ヨーロッパではまだまだ人気が出ないですね。やっぱり120km/h以上の速度で走るとハイブリッドの燃費の良さがなくなって、はっきり言って…、こんなこと言っていいのかわかんないけれど…、乗っても楽しくないんですよね。まだ、これからメーカーに頑張ってほしいんだけど、電気自動車とハイブリッドは、ヨーロッパの有名なジャーナリストが、「冷蔵庫に四輪を付けて走らせている」というようなことを言っていたんですよね。そんなに間違っていないんじゃないかと思うですよね。確かに性能も質感も信頼性もすごく良い。でも、パッションの部分やエモーションの部分では少し欠けているんじゃないかな。

 

岩貞:なるほど…、となると、日本に対して今度は、アジアメーカーがいろいろと頑張ってきていて、最近、韓国車の評判が凄く高まってきているんですが?

 

キアモータースから発売されているコンパクトカー「キア・ソウル」

ピーター:韓国車は日本でほとんど乗れないんだけれども、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアに行くと、ほんとに(走っている台数が)多いんですよね。

 

岩貞:すごくヨーロッパとかでは売れていますよね?

 

ピーター:ボクもこの前オーストラリアに行って、キアとヒュンダイのクルマそれぞれ1台乗ったんだけれども、ホントに出来が良い!完成度も高いし、信頼性も良い。乗り心地も良い。質感も良い。しかもコストパフォーマンスが高い。ある意味で、日本車を超えている部分がある。

 

岩貞:それマズイじゃないですか!?

 

ピーター:結構マズイ…・。日本の某メーカーの副社長(名前はあえて言いませんけれども)がこの前モーターショーで、「韓国車は要注意」って言っていましたね(笑)。なによりもデザインが良い。例えばキアモーターズがありますよね? キアが5年前に雇ったチーフデザイナーであるドイツのピーター・シュレイヤーさんがとても優秀で、有名なデザイナーで、ピニンファリーナとジウジアーロと並ぶくらいの方です。

 

岩貞:シュレイヤーさんは、アウディのTTをデザインされた方ですよね?

 

ピーター:そうですね、あとはA6とか…。日本もやっぱりデザインに力を入れれば、もっと売れるんじゃないかと思うんですよね。

 

岩貞:日本はもう少しパッションのあるデザインにしていくべき?

 

ピーター:そうですね。で、ハイブリッドや電気は、(日産の)ゴーン社長が、「2020年までにラインアップの1割をEVにしたい」と言っていたんですが、果たして普通の人が乗りたがるのかな? と思うんですよね。ハイブリッドもそうなんだけど、バッテリーを十分につくれないので。

 

岩貞:今、レアメタルの問題があるので、生産ができないんですよね。

 

ピーター:普通の人は既存のレシプロとかディーゼルにまだ乗りたいんですよね。欧州のメーカーもすごくがんばってつくっている。だから、EVやハイブリッドは果たしてどうかな…、と思うんですよね。もうちょっとパッションを入れてほしいな!

 

岩貞:あっという間のエンディングですがピーターさんいかがでしたか?

 

ピーター:もっと話したいことが一杯あるんですよねー。

 

岩貞:私も、もっと聞きたかったです。

 

ピーター:やっぱり2つ言いたいのは、さっき話したEVとかハイブリッドの問題なんですが、確かにいろいろなメーカーがつくっていて、より良いハイブリッドとか、より優れたEVを(環境のことを考えると)つくらなければならないんですが、もっとパッションやエモーションを入れて欲しいですね。そうしないと、たくさんの人が乗りたがらないと思うんですよね。それともうひとつ、モータースポーツについて。日本は自動車大国なのに、一般の人たちがモータースポーツに興味がないということが、非常に残念ですね。イギリスに行けば毎週のようにケータハムに乗って、ロータスに乗って、いろいろな走行があって、すべてのサーキットがフルブッキング(予約で完売)で入れないですね。アメリカもそうですし。だからモータースポーツにもう少し興味を示してほしいし、(できればレースに)参戦してほしいですね。

 

岩貞:そうですね、もう少し、いろんな意味でモータースポーツを楽しめるような環境になっていくといいですね。


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