【メディア対抗2013】ロードスター・パーティレース参戦記 腕ならしと目ならしで、サイコーのレースを楽しんできた! レポート:津々見友彦
毎年9月に開催される自動車関連媒体によるワンメイクレース「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」、通称メディ耐と呼ばれるこれに、私、津々見友彦もザ・モーター・ウィークリーチームとして参戦している。決められたガソリン容量の中でいかにトップをとるかで速さと頭が試される、なかなか面白いレースだ。今年ももちろん楽しみにしているのだが、その腕ならし、目慣らしなどを兼ねて、3月24日にB-Sport主催のロードスターワンメイクレース、「パーティレースII」(SCCN SPRING RACE MEETING in SODEGAURA)に参戦してきた。
2012年の8月にも同じ袖ヶ浦フォレストレースウェイで行われたパーティレースに参加したが、そのときには排気管のキャタライザーが壊れるトラブルに見舞われた。エンジンはフン詰まり状態でパワーダウンし、なんとリザルトはビリッケツ。ぐぬぬぬー。今回はそのリベンジも兼ねての再チャレンジである。
●公道もサーキットも走れるロードスター
さてこのパーティレースで使用するロードスターは、レース仕様ベースモデルのNR-A。エンジンはノーマルの2.0L、パワーは170psのまま。車内にラジオはついてないが、エアコンは装備されている。サスペンションはビルシュタインの車高調整式で、トルセンLSD、オプションでロールバーなどもセットできる。これがナンバー付きで自走が可能で、サーキット走行もできるというモデル。街中はもちろんのこと、あまりお金を掛けずにモータースポーツも楽しめる「一口で二度美味しい」、のクルマバージョンなのだ。
私ももちろん自宅のガレージから袖ヶ浦のサーキットまで自走で移動する。その道中も楽しいものだが、ひとつだけネックが…。前回も書いたけど、ETCがないから東京湾アクアラインの通行料金が高価なのがちょっとだけ辛い…。
●サーキットで大感激!
自走してサーキットへ到着した私を迎えてくれたのは、5〜6名のサポーターの人たち。「今日一日、お手伝いしますよ!」「え、なんで!?」と驚いていると、事務局のご配慮とあとは同じピットの登坂紀選手がブログで呼びかけてくれたんだとか。登坂選手は2012年の前回、ひとりで来てマゴマゴしてる私を見ていたらしく、ご親切にご自分のチーム員を派遣して頂いたり、大変感謝、そして感激! 車検場へのクルマ運び、空気圧調整、発信器(トランスポンダー)の取付などなど、テキパキとみなさんにサポートしてもらった。ありがとうございます!
そういえば登坂選手は、前日の練習日にはタイムスケジュールを大きく見やすくプリントした物も頂いたんだった。しかも彼はそれを周りの参加選手にも配っていて、それを見ながら「何て素晴らしい雰囲気なんだろう」と、改めてパーティレースの和気あいあいとした雰囲気に感動してしまった。
普通、レースといえば、周囲はライバルだからどうしてもギスギスしてしまうもの。でもこのパーティレースは、まるでアメリカやヨーロッパのクラブレースのように、大人のいい雰囲気がある。いいレースだ。
その他、元自動車雑誌編集部の石田徹選手(NBクラス・3位入賞)もタイヤゲージを貸してくれた上に、計測までしてくれて感激。ロードスタースペシャリストの加藤彬彰選手からは細かな走り方を教えてもらったし、私が校長をしている「ポルシェクラブ六本木」のメンバーである北浦一司さんと三谷喜一郎ドクターも参加していて、知り合いだらけで心強かった。
マシンの車検や、ヘルメットやグローブなどの装具チェックも、ボランティアの人たちの助けもあって無事に完了。特に佐藤さんご夫婦には感謝感謝。奥さんの晃代さんは自分でもロードスターレースに参加しているものの、今回は練習中にクラッシュしてマシンが修理中のためにヘルプに駆けつけてくれたとか。本当にみなさんにはいくら感謝してもしたりない。これは何としても、レースの結果でお返ししなくては!
●予選
このパーティレースの予選は15分間。前日の練習走行で少しはコースに慣れてはいたものの、それでもまだブラインドコーナーの第1コーナーと最終コーナーが遅い。レーシングドライバーを長年続けている私だけど、実はとても心配性で、先が見えないコーナーはなかなか攻められない。もっともこれはデメリットでもあり、メリットでもある。パッとラップタイムが上がらないかわりに、ムチャをすることがないのでコースオフやスピンが少ない。まあどっちにしても登坂選手のようにマジメにたくさん練習するしかない。
登坂選手はロードスターレース参戦はまだ数年とのことながら、ほとんど毎週袖ヶ浦に通って、その腕前はただ驚くばかり。私より2秒も速い素晴らしい選手だ。私がNC1クラスで、彼がNC2クラスということに感謝したのは言うまでもない(笑)。
さて心配性の私もロードスターのベテランたちに混じって走りながら、少しずつ慣れてきた。サーキットを走るときにもっとも大切なのは、速度感。これが育ってないととにかくコーナーが速く見えてしまう。そして恐怖感のために、どうしてもスピードを落としてしまうことになる。
さらに落ち着いた正しい行動が取れないから、無駄な操作でクルマにストレスを掛けてしまう。そうなるとタイムは落ちる、タイヤは痛むと負のスパイラル。今回はロードスターでここを走るのは2回目なので、速度感はなんとかなったのか楽に走ることができた。
で、予選結果はやっと22秒を切って21秒前半に入れることができた。でもポールポジションの田原大助選手は19.511秒、なんとラップレコード! 私よりも1.7秒も速いとは…。これはたぶんラインと、各コーナーのスピードの違いなのかと。
NR-Aは街乗りも可能なマシンセッティングで、決して純粋レーシングのようにガチガチの足周りではない。だからコーナーでは結構ロールもするし、ハンドリングは穏やかな特性で、ギリギリのベストなパフォーマンスを発揮させるには微妙なコントロールが要求される。そしてそれはパッと乗ったくらいでは会得できない。経験を積むしかない、ということはトップクラスのみなさんを見れば分かること。たぶん相当に走り込んでいるんだろうなあ。
ちなみに手軽にサーキットを楽しめるベース車両のNR-A。もちろんサーキットを走るのには色々とハードルが低いマシンだが、ベストを追い求めると今度はハードルがものすごく高くなる。それだけに攻め甲斐があるマシンということなんだろう。
まあとにかく、予選結果はクラス5番手で、10台中の真ん中。まずまずということにしておこう。
●レース
このパーティレースは私の参加するNC1とNC2、NBの3クラスがあり、各クラスが同時にスタートする。今回の出走台数は24台。ちなみにこのレースではスタートラインに整列するためにピットアウトして1周するときに、助手席にピットクルーなどが同乗可能なのだ。
ピットには来たことがあるけれど、サーキットは走ったことがない。そういう人でもサーキット走行を経験できるというわけ。まあいつも一人で来てたボクには同乗してくれる人はいないんだけど、今回はボランティアで駆けつけてくれた晃代さんが「私が乗ってあげるからね」と同情、いや同乗を買って出てくれた。おかげでロンリーだった私も賑やかに1周のパレードランを楽しめた。ありがとう!
●抜群のスタートも…
私のスタート位置は前から5列目10番手。スタートはF1と同じく5個のレッドライトが順に点灯していき、最後に消えたときがスタートとなる。久し振りのサーキットでのスタート、この瞬間はいつも緊張するけど、これがたまらないのだ。5個の赤色灯が消えた瞬間、クラッチミート! スルスルスルと前に出て1コーナーを過ぎるまでに3〜4台を抜いた。会心のスタートが切れたぞ!
さてスタートで前に出たものの、その後はやはり練習不足が悔やまれ、1コーナーと最終コーナーがとにかく遅い。前を行くクラス1、2位の田原、入江両選手と私を比較すると全く別格で、グイグイと飛ばして、そのうちに視界から消えてしまった。
1コーナーからのストレートで後続の石川琢也選手や森山晃正選手にジリジリと追い上げられる。インフィールドでなんとか引き離すものの、最終コーナーの遅さでホームストレッチで差を詰められて、1コーナーではさらに僅差に。この繰り返しを何とか耐えながら走るものの、私の後方はレーシングスクール状態。先生のクルマを先頭にしてずらーっとつながっている、あの状態だ。たぶん後方の両選手はさぞやイライラしたことだろう。
●バトルの果てに
12周で争われる決勝レース。その10周目、ついに私の後ろにいた森山選手が動いた。4コーナーのブレーキングを遅らせてイン側へと潜り込んでくる。続けて石川選手にもパスされてしまう。「うーん、これは最終コーナーが遅いんだから仕方ない」と、一瞬は諦めたものの、その先は私の好きなインフィールド。できるだけ丁寧に、そしてマシンに無理をさせずにコーナーをなめるように攻めて走ることを心がけた。そうすると、なんと! スーッとイン側からその2台を抜き返すことができた。元のクラス3番手の座に復帰して、その後はなんとか踏ん張ってそのままチェッカーとなった。
レースを終えていろんな人とまた和気あいあいとパドックで過ごす。これもパーティレースの楽しみのひとつ。今回、面倒を見て頂いた登坂選手は、NC2クラス2位という好成績をあげていた。おめでとうございます!
このパーティレースは、楽しみでやれるレースとはいってもドライビングのレベルが高く、なかなか優勝できるものではない。それでいてマナーが素晴らしく、だからこそ安心してバトルができる。ライバルではなく、そこにいるのは楽しい仲間たちなんだなあと実感した。そしてサーキットをロードスターで攻めながら走るのって、なんて楽しいんだろう。去年に続いて2回目の参戦だけど、まだまだ奥が深くて、ゴールははるか彼方だ。また次の機会に出てみたい。
最後に今回、ボランティアでピットクルーを手伝ってくれたみなさん、本当にありがとうございました!