【車両概要】ボルボV40試乗by佐藤久実 強力ライバルと真っ向勝負を挑むCセグの切り札
ボルボV40(ブイ・フォーティ)は、Cセグメントに属する5ドアハッチバックだ。従来のセダンS40、ワゴンV50、そしてハッチバックのC30を統合するカタチで登場した。そして、Cセグメントといえば、フォルクスワーゲン・ゴルフや、これまた大幅に路線変更して登場したメルセデス・ベンツAクラスなどがライバルとなる大激戦区である。
今までは、ボディサイズやスペックなど比較的独自路線を歩んでいたボルボだが、今回はライバル勢とガチンコ勝負を挑んだモデルといえる。
そんな気合い十分のクルマだが、ロー&ワイドなフロントビュー、傾斜のきついフロントウィンドゥなどスポーティさを強調したエクステリアデザインは、スタイリッシュで個性的、そして斬新で、新しいながらも“ボルボらしさ”があり、一度見たら忘れない存在感を放っている。
インテリアも、“スカンジナビアン・デザイン”を感じさせる、シンプル&クリーンで居心地が良い。特に、インストルメントパネルの液晶メーターのデザインは斬新で視認性にも優れる。さらに、「Elegance」「Eco」「Performance」3つのテーマに表示切り替えができる。iPhoneからイメージを得たというフレームレスのルームミラーや、イルミネーションの入ったシフトノブなど、さりげなくディテールへのこだわりが感じられる。
グレードは、ベースモデルのV40 T4と装備充実グレードのT4 SE、上級モデルのV40 T5 R-DESIENの3種類がラインナップされる。
T4には、直列4気筒1.6l直噴ターボエンジンGTDIを搭載し、180馬力を発揮する。ライバルに比べても圧倒的なパワーを誇る。もちろん、動力性能に不満を覚えることはなかった。高速やワインディングでもちょうど良いパワー感で気持ち良く走れる。そして、パワーシフトと呼ばれるデュアルクラッチトランスミッション6速DCTが組み合わされる。今回のV40のパワーシフトには、高回転まで引っ張って変速するスポーツモードが備わる。こんな所からも、スポーティな性格が垣間見える。
サスペンションもしかり。本国では、3種類の設定があり、V40 TEには中間の「ダイナミック」が標準装備される。乗り心地を犠牲にしないギリギリまで締め上げられるている感じだが、不快な突き上げはない。そして、新たに装備された電動パワーステアリングのスムースな操舵フィールにより、正確な操舵がしやすい。
一方、T5 R-DESIGNは、フロントグリルやリヤディフューザーなど専用装備が施され、ディテールはシルクメタル仕上げとなり洗練されたスポーティな雰囲気に包まれる。サスペンションも、ベースモデルの「ダイナミック」からさらに剛性強化された「スポーツ」を標準装備。18インチタイヤと相まって、ボディを受け止める。
2l直列5気筒ターボエンジンは、最高出力213馬力、最大トルク30.6kgを発揮。そして、T5にはパワーシフトではなくスポーツモード付6速オートマチック・トランスミッションが組み合わされる。
アクセルを踏み込んだ瞬間、予想を上回る力で走り出す。3l並みのトルクを有し、ターボを感じさせないアクセルレスポンスの良さだ。スルスルと滑らかに回転が上昇しながら加速フィールは、スポーティな力強さとともにマルチシリンダーらしい上質さも見られる。
ソリッドな乗り味で、ワインディングでもアップダウンや荒れた路面においても、常に路面を捉えるロードホールディングの高さが印象的だ。多少ゴツゴツするシーンもあるが、フラットライドで思い通りにクルマが動く気持ち良さが上回る。
セダンやワゴンも集約されたモデルだけに、リヤシートにも工夫が見られる。両サイドのシートがセンターよりにレイアウトされているため、Cピラーやサイドウィンドゥの傾斜が気にならず、ショルダースペースもゆったりしている。センターシートは、若干幅は狭いものの、シートバックが前面に出ているため、肩身の狭い思いをしなくてすむ。5人乗りだが、大人4人がゆったり座れるスペースとなっている。
トランクスペースは、標準的広さを確保するが、従来のV50オーナーなど”ワゴン派”の視点から見ると狭さを感じるかもしれない。が、そこはワゴンで一世風靡したボルボだけに、ラインナップに不備は無い。V60やV70など、選択肢は豊富に用意されている。
安全装備も充実している。最近は、「ぶつからないクルマ」のCMが話題となり、自動ブレーキへの認識度が高まっているが、この領域においてもボルボはパイオニアである。「シティセーフティ」をはじめ、上級モデルと同等の装備が備えら、さらに機能のアップデートも図られている。そして、世界初となる「歩行者エアバッグ」が装備される。万一、歩行者との事故が起きた際、ワイパーなど突起物への衝突を避け、ボンネットとの空間を作る目的がある。クルマの乗員のみならず、歩行者の安全まで考えられているのだ。
日本仕様は、ドアミラーステーの変更により、全幅が1,785mmに抑えられるなどきめ細かい対応も取られ、価格は269万円からと、バリューの高さが感じられる。V40は、デザイン、走り、環境、安全装備と全方位で高い満足度を感じられるモデルだ。(インプレッション:佐藤久実)