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第225回放送『マツダ 新技術スカイアクティブについて』


第225回


マツダの革新的新技術スカイアクティブはリッター30km

 

岩貞:今週はマツダの新技術である、スカイアクティブについてお送りします。

 

石井:今年に入ってからですかね、ずっと話題になっていましたよね。ハイブリッドカーじゃないのにリッター30kmの燃費を誇るデミオが発売されると。

 

岩貞:それってありなんですか?

 

石井:ありでしたね。実際発売されましたから。

 

岩貞:そして今日は、マツダのパワートレイン開発本部の人見光夫さんにお越しいただきました。

 

人見:よろしくお願いします。

 

マツダ株式会社 パワートレイン開発本部長 人見 光夫 さん

マツダ株式会社 パワートレイン開発本部長 人見 光夫 さん

 

石井:人見さんはずっとパワートレイン、エンジンの開発をされていたんですか?

 

人見:そうです。入社以来ずっとエンジンの先行技術開発をやってきました。

 

石井:先行技術開発ということは、量産車はやってこなかった?

 

人見:本部長になって初めて、量産車に携わりました。

 

石井:岩貞さん、今、人見さんからお話を伺い始めましたけども、なんか話方が学者さんみたいで、ちょっとマツダらしくないですよね?(笑)

 

岩貞:マツダの技術者の方にいろいろ、お会いするんですけど、わりと勢いのある方が・・・・・・

 

石井:まあ、おおらかというか、え〜じゃろ、え〜じゃろという感じの人が多いなかで・・・・

 

岩貞:こんなスマートな方にお目にかかるのは非常に珍しくて(笑)

 

石井:人見さんにお話を伺うと、全部理論で、数字でバシッと返ってくるんで、こちらの頭がついていけないときがあるんですね。それで、今日はそのスカイアクティブのことをお伺いしたいなと思っているんですが、まず、スカイアクティブ自体は、エンジンだけではないですよね?

 

人見:ハイ。そうです、エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーこれらの新しい技術のすべてをスカイアクティブと呼んでおります。

 

石井:マツダは企業の平均燃費で、2008年比で2015年までに30%削減するという目標をたてて、これに対してスカイアクティブがソリューションだということですね。そもそもなんで、燃費を30%上げていくという考え方が生まれたんでしょうか?

 

人見:最初のきっかけは欧州のCO2規制というもので、2012年には120gに削減するという規制で、それにはだいたい、30%ぐらい燃費を向上させないと到達しないレベルの要求でした。

 

石井:これ、キツイんですよねぇ。

 

人見:非常に厳しいです。

 

石井:日本と違ってヨーロッパやアメリカは企業平均の燃費をあげなくてはいけないんですね。ちょっとでも超えると凄い罰金をとられるので、自動車メーカーはどこも大変です。

 

岩貞:本気でやらないとダメなんですね。

 

石井:それで、今回ハイブリッドではなく、コンベンショナルといいますか、普通のエンジンで燃費を上げていくと。

 

岩貞:私ね、そこがよくわからないんですけど。今、日本でもハイブリッドが凄く注目されていますよね。なぜHVではなくエンジンそのものの効率というか、人見さんはスカイアクティブのエンジンがご担当ということで、どういう風に着目されていたのですか?

 

人見: まだまだ、エンジンは改良する余地がたっぷり残っているというのは、ずっと思ってましたし、エンジンやっている人はみんなそう思っていると思います。それ と、マツダの企業理念として、マツダ車にお乗りいただいている方すべてに優れた環境性能を。というのを目指しておりますので、まだ、ハイブリッドとか価格 が高いわけですからすべての車種に搭載というのは難しい。でも、エンジン主体、内燃機関主体のクルマならすべてのお客さんに提供できる。そして30%くら いなら、内燃機関主体でもまだ、十分いけると、こう考えたからです。

 

石井:多くの人に恩恵があるということと、環境性能もありますよね。環境をよくするには、例えば1車種だけ凄くいい燃費の車を出してもダメで、全体的にあげないといけないんですね。だから、欧州の規制とユーザーの恩恵がうまく合致していますよね。

 

岩貞:ただ、欧州のそのものすごい厳しい規制を、人見さんはエンジンだけでいけると確信は持てたんですか?

 

人見:やはり小手先では無理で、エンジン、ミッション、シャシーなどこれらをあわせてやれば30%はいけると考えて、会社としてスカイアクティブをはじめたわけです。

 

石井:ここがまた、凄いことだとおもっているのは、今言ったエンジンとかプラットフォームとか全部を一気に開発しているんですよね。

 

人見:はい。一気にやらないと30%いきませんので(笑)

 

石井:普通開発は、車種ごとにやるじゃないですか? でも、エンジンも、ミッションもシャシーもまとめて開発しているわけで、あと1年〜2年もすると全部スカイアクティブになったりするんですか?

 

人見:会社としての目標は、は2016年までには8割ぐらいをスカイアクティブにしていくと。

 

岩貞:マツダ、勢いありますね。開発担当者の方ってそんなにたくさんいらっしゃったんですね?

 

人見:他社と比べたらそんなに大勢いるとは思っていませんが(笑)、まあ、ひとつのエンジンをつくったらそれと同じものをいかに効率的に造るか? というものづくり革新というのもやっていますので、できるだけ少ない人数で効率的に開発しようとしております。

 

石井:このスカイアクティブですが、今回マイナーチェンジしたデミオはエンジンだけですよね?

 

人見:基本的にはエンジンだけですが、アイストップ(アイドリングストップ)も加えました。

 

石井:なるほど。そこも大きいですね。

 

人見:それと車体のほうも、現行をベースに空気抵抗、転がり抵抗の改善、CVTの制御を変えてエンジンとのマッチングをさらに良くしています。

 

石井:なるほど。で、人見さん、エンジンなんですけども、これまでの普通のエンジンと比べて何が違うんですか?

 

人見:一番の特徴は圧縮比を上げたということです。

 

石井:高圧縮に。いま14:1ですよね。世界一と言われていますけど、普通のエンジンが10:1か11:1ぐらいですかね?

 

人見:そうですね。

 

石井:圧縮をあげれば効率が良くなるというのは、みんな知っていることなんですけども、他のメーカーはここに手を出していないですよね?

 

人見:はい。ノッキングというのを克服するのが大変ですから、手を出していないんだと思いますが・・・・・・

 

石井:そこをあえて、マツダでは開発していったと?

 

人見:われわれはエンジンの究極の姿を想い描いてまして、われわれがエンジンの効率を改善できる要素、因子は7つしかないわけです。

 

岩貞:え、たったそれだけですか?

 

人見: はい、7つです。分けると7つで、つまりすべての技術はここに入るわけです。それで、理想から遠いものが4つぐらいあります。そのうちのひとつが圧縮比で す。ですから4つしかない残った課題ですから、ひとつが抜けても理想のエンジンには到達しませんので、やるぞ!と決めたわけです。これが100も200も あったら圧縮比という道を選ぶ必要がないと思ってしまうでしょうから。

 

石井:それで、高圧縮を目指していったわけですが、苦労はされなかったんですか?

 

人見:苦労というのはそんなに感じたことはないんですけど(笑)

 

石井:そうなんですか? 大変な思いをしたのかなって想像していたんですけど・・・

 

人見:まぁ、周囲の理解を得るのに当初は苦労しました(爆笑)

 

石井:なるほど。逆に、これはいけるぞ! という手ごたえを感じた瞬間ってあったんでしょうか?

 

人見:はい、全く新しい燃焼方式を追求するという目的で高圧縮エンジンを研究していたんですけども、もう、無理かなというときがあって、でも、普通に高圧縮エンジンとして運転してみようと思ったんです。そうしたら、思い
のほか、性能が下がったんですけども、その下がり幅がたったこれだけか!ってわかりまして、これなら、これを核に次の技術にいけるなと思った瞬間、非常にうれしかったですね。

 

石井:圧縮をあげるといろんな問題がでてきて性能が下がってきちゃうけども、実際にやってみたら下がり幅がすくなかったということですね。

 

人見:普通、想定しているよりも少なかったので、これはいけるなって思いました。

 

岩貞:その瞬間というのは、ガッツポーズとかするんですか?

 

人見:いや、まぁ、すごくひとりで喜んで、家に帰ってビールがおいしかった。そんなこと滅多にないことですから。

 

石井:その一方で欧州のメーカーは、いわゆるダウンサイジング・コンセプトでエンジンンの高効率化を図っているじゃないですか。そちらに行こうとはしなかったんですか?

 

人見: これも先ほど言いました7つの要素のうち2つで、ダウンサイジングで燃費がよくなるのは機械抵抗と空気を出すとき、吸うときのポンピングロスというのがあ るんですが、これが、小さいエンジンだと大きいエンジンより少ないので燃費がいいわけですけど、われわれは機械抵抗については過給しないので、そんなに加 重もかからないので抵抗低減をグッと進めれば、小排気量に近いものまで出せる。それからポンピング損失は、バルブタイミングの可変装置でほぼ小排気量のも のと同じレベルまで持っていける。あとは過給をするには圧縮比を下げないといけない。我々は高圧縮比。このときの効率の差。トータルで見ると、われわれの コンセプトのほうが燃費がよくなると確信しまして、こちらの道に進みました。それと私は過給ダウンサイジングは20年ぐらいやっていますからその結論とし て止めました。

 

石井:なるほど。力強い言葉をいただきましたね。対ダウンサイジングで勝つぞ! というような宣言にボクには聞こえました。

 

岩貞:私にもそう聞こえました!

 

石井:それで、このスカイアクティブのエンジンですけども、これで終りというわけではないですよね? その理想に向かって行くなかのワンステップというか、まだまだ先はあるわけですよね。

 

人見:はい、まだまだ進化する余地は十分残っています。

 

石井:究極的にはどうなるんですか?

 

人見:究極的にはトータルの効率でみれば、今の倍ぐらいのところまでは持っていきたいなと思っています。

 

岩貞:お〜!

 

人見:最高効率じゃないですよ。

 

石井:全体的な効率ですね。

 

人見:全体効率です。

 

石井:あとは、今回ハイブリッドじゃないというところが、いろんなみなさんからは疑問に思われているかもしれませんね。別にハイブリッドを否定しているわけではないんですよね?

 

人見: 全く否定しておりません。減速時のブレーキエネルギーを回収してエンジンの弱いところで使おうというのは、非常に合理的な考え方だと思っています。エンジ ンの弱いところ、効率の悪いところが今は広いので、大きなモーター、大きな電池が必要になっています。そこで、われわれはエンジンの苦手な領域を狭くし て、つまり、高効率領域をもっともっと広げた上で、ちいさなモーター、小さな電池でハイブリッド化すれば、よりお客様に提供しやすい価格というのができる と思っております。

 

石井:今後の予定でボクが知っているのは、アクセラのマイナーチェンジでスカイアクティブのエンジンとミッションが搭載されて、あと、フル・スカイと呼ばれていますけど、全部スカイアクティブの技術が投入されたモデルが発売されますよね?

 

人見:CX5というSUVで、みなさんのお手元には来年お届けできると思っています。

 

石井:なるほど。これはディーゼルエンジンも搭載するんですか?

 

人見:ハイ、ディーゼルエンジンも搭載します。

 

岩貞:来年ということは、今年は年末に東京モーターショーがありますが・・・・・・

 

石井:そうですね。そこで見られるんですか?

 

岩貞:見られるんですか?

 

人見:さあ?・・・・・・広報に聞いてください。

 

岩貞:わかりました(笑)

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