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【読めるラジオ】第238回放送『日産 リーフ』


第238回


リーフが走り出して約1年。EVが大好きな3人が本音で語り合いました!

 

 

石井:今週は日産リーフについてお話していきたいと思います。で、ここでもうひとり、スペシャルゲストに登場していただきましょう。日産リーフの開発責任者、門田英稔(かどた・ひでとし)さんです。門田さん、よろしくお願いします。

 

(パチパチパチ…※拍手)

 

左から桂伸一氏、日産リーフ開発責任者の門田英稔氏、石井昌道氏

 

門田:日産自動車の門田です。本日はよろしくお願いします!

 

:よろしくお願いします。(まずは)門田さんの経歴を簡単に教えていただけますでしょうか?

 

門田:日産自動車に1982年に入社しまして、今年で30年目になります。最初の10年はシャシー設計部におりまして、主に足まわり(の設計)を担当していました。サスペンションやステアリングやアクスルをやっていまして、1991年の1月に各社EVをやるということになって、日産でもそういう開発体制を作るといったことで集められました。そこから10年間、最後はハイパーミニまで電気自動車をやった後に、会社の業績が思わしくなくなり…、日産リバイバルプランということでガソリン車の方に数年移りました。その後、燃料電池の開発を追浜で立ち上げるということで呼ばれまして、次にハイブリッドやアイドルストップなど電気を使ってクルマの燃費を上げるという技術を長くやっておりました。そして4年前の今頃に、リーフのプロジェクトを立ち上げるといったことで、呼ばれました。

 

1999年から2002年まで日産が生産、販売した2人乗り電気自動車のハイパーミニ。三菱のアイミーブ同様、軽自動車規格に収まって、実際に黄色いナンバーで走っていた。

 

:ハイパーミニは実はEVフェスティバルで、ボクら何台か集まってレースをやらせてもらったころがあるんですが、非常にバランスの良いクルマですね。

 

門田:そうですね。クルマ屋からいいますと本当にイチから作り上げることができたという、エンジニア冥利につきるクルマだったんですけれども、数百台作ったところで生産中止といったことで…。収益性があまり良くなかったんですね。そういった将来EVの時代が来るにもかかわらず、(生産をやめてしまったのは)私としては非常に忸怩(じくじ)たる思いがあったことは事実ですね。

 

石井:でもハイパーミニは、いわゆる2人乗りのコンパクトなシティーコミューターじゃないですか。今のEVの流れとしてはリーフを別とすると、皆さん小さいコミューターの方向にいっていて、それを考えるとハイパーミニこそ、今のメインストリームのクルマにも見えるんですけどね。

 

門田:そうですね。やっぱり都市部で使われるクルマだということだと思います。したがって(ハイパーミニの)コンセプトは今でも息づいていると思いますし、今でもデザイン的にも先進性があって、私としてエンジニア冥利につきるクルマでしたね。

 

:すごい先取りをしていたんだなって、改めて思いますよね。

 

石井:それに対して、リーフはどういったクルマなんでしょうね?

 

2010年12月に発売された日産・リーフ。9月末時点で日本国内では約7300台が登録されている

 

門田:リーフは世界中で売れているクルマのど真ん中に一度EVという格好で入れてみようという、そういう思いがあったクルマなんで、サイズ的には5人しっかり大人の方が乗れるといったコンセプトですし、都市に偏らずもう少し広げた使い方もあるんで、北米の走行モードで100マイル(=160km)走れるクルマを作ろうということで進めてまいりました。

 

石井:なるほど。今、販売台数はどれくらいですか?

 

門田:9月末時点で、日本国内では7300台。アメリカで約6000台。ヨーロッパで1200台くらい。全部で1万5000台くらいのレベルまできています。

 

石井:結構、いってますね。

 

:いってますよね。ボクが借りていた頃に聞いたのは、まだ6000台だったので。

 

門田:計画的に販売していこうという線のオンラインにのっていますね。

 

石井:ボクも桂さんもリーフの場合は、長めに乗ってみようということで1カ月くらいお借りして乗ったんですよね。

 

:そうですね。ボクは(借りている期間を)延ばしましたけどね。

 

石井:どれくらい乗りました?

 

:1500kmくらい乗りました。

 

石井:結構な距離ですね。

 

:そうなんです。うちにはハイブリッドカーもあるんだけれども、リーフと2台あって、どっちに乗ろうかなって思った時に、やっぱリーフにいっちゃうんですよ。

 

石井:ほう、それはどうして?

 

:リーフに慣れてしまうと、ハイブリッド車のエンジンかかった瞬間に「あれ !? なんかちょっと古くさいかな…と」

 

石井:あ~、あの「ブルルン」ていう感じが? ま、確かにね…。

 

門田:それは我が意を得たりですね。最初クルマの開発を始めた時にですね、今日50kmくらいしか乗らないんだけれども、ガソリンのクルマのA車とリーフをどっちにしようか考えた時に、ちゅうちょなくリーフに乗ってもらえるくらいのクルマを作ろう…と最初から思っていたんで、そういう話を聞くと非常に嬉しいですね。

 

石井:非常に気に入っているんですけれども、その一方で、課題もあったりするかもしれません。桂さんはなにか感じたことはあります?

 

:やっぱり充電施設の問題ですね。東京都内では相当数はあるんですけど、いざ行ってみると休みだったりとか、最悪だったのは壊れていたことも…。

 

石井:あとボクが経験したのは、雨の日はダメって言われました…。(笑) まだ設置している側も理解をしていなかったんですね。(長く)乗ってみないとやはりわからないことってたくさんあるなと、実際リーフに乗ってみると思いますね。桂さん、ほかにリーフに乗っていて感じたことってありますか?

:急速充電のプラグというかコネクターの部分が上手く入れられないですね。

 

石井:そうなんですよね。ボクも上手く入れられなくて2分くらいマゴマゴしたことがあります。

 

:我々は(ある程度)わかっているつもりでいるにも関わらず(上手くいかないので)、どうなのかなっていうところで、門田さん、どうなんでしょう? 一般の方からの声っていうのは?

 

門田:そうですね、やはり急速充電のコネクターが使いにくいという声は正直あります。これは日々お客様が使っている様子を観察させていただきながら、改善していきたいと考えています。

 

 

石井:ほかにユーザーの方からの声で、要望などはありますか?

 

門田:ユーザーからは3つほど言われています。ひとつ目はやはり航続距離が短い。ふたつ目は値段が高い。3つ目は急速充電の設置箇所が少なくて遠乗りする時に少し不安…といったことです。

 

石井:箇所が少ないのもそうなんですが、いざ行ってみるすでに充電しているクルマがいて待たされたりとか、そういうこともありますよね?

 

門田:そうですね。電気自動車は、基本的な使い方としては、長い時間駐車しておくところ、例えば、自宅だったり、オフィスだったりするかもしれませんけど、割と長い時間停めているところで充電するのを基本としています。ただそうは言っても、遠くへ行った時に急速充電は必要だろうと思っています。

 

石井:だから基本的には家で夜、充電して、それでまかなえる範囲で使うのを基本として、たまに急速充電器に頼るということですね?

 

門田:そうですね。月に1回か2回は急速充電を使って、いつもとは違った使い方をするのではないかと想定はしておりましたから、急速充電が足りなくなることは考えていたので、日産自動車が自社で急速充電器を作ろうという路線は、ずいぶん早い段階からとっていました。

 

石井:それはもうできているんですか?

 

門田:11月から販売したいということで、日産のエンジニアが自分たちで図面を書いて、工場で生産を開始し始めているところですね。

 

日産自動車が自社で開発した新型急速充電器。

 

 

:(リーフを)使ってみてわかったんですが、やはり日産ディーラーの全店舗に急速充電を置いてもらいたいですよね。

 

門田:そうですね。2015年までに約5000箇所に急速充電を置いていきたいと…。当然日産のディーラーもベースとなる部分だと思います。

 

石井:電気自動車を販売するということは、その周りも大切なんだなということですよね。最近は「リーフ to ホーム」ですか? 家とリーフをつなぐ技術が盛んに言われていまして、注目されていますね。

 

門田:正直言って、私どももこんなに早く「リーフ to ホーム」を実現するとは思っていなかったところもあります。やはり3月の大震災によって、エネルギーのマネジメントを皆さんが考えるようになって、リーフは当然、電気を取り出せるものですから、そういった技術にもリーフは貢献していこうと思っています。

 

:素朴な質問なんですが、リーフ自体に充電することがままならない状況なのに、そこから電気を取り出すなんて、なんだか「鶏が先か、卵が先か」みたいな話になりませんか?

 

門田:電気というのは、どうしても夜になると余りがちなエネルギーソースであったりですね、なかなか貯めにくいエネルギーソースであったり、そういう意味合いを持っています。したがいまして、昼間、例えば太陽電池で発電したものを、昼間使っていないリーフに一旦貯めておくとか、そういった太陽電池とともに家庭の、もしくはコミュニティの、もっと大きく言えば国単位のエネルギーを考えていくべきではないかと思っています。

 

石井:なるほど。やはりリーフは大容量で非常に高性能なバッテリーを持っていて、ここに貯めることができるというのも(リーフの)価値のひとつなんですね?

 

門田:そうですね。リーフの電気容量というのはご家庭の約2日分の電気を貯めることができます。これを使わない手はないんじゃないかと、私は思っています。

 

 

石井:あと、この夏は節電が叫ばれていて、特にピーク時の需要が問題ですよね。これを上手くシフトしていくということも、この「リーフ to ホーム」を使えば解決するんじゃないかと、いうことですよね?

 

門田:そうですね。24時間ご家庭のエネルギーマネジメントをどうすれば一番電気代が安く収まるのか…というのをよくよく考えていただくと、非常に賢いモビリティだということにリーフはなると思います。

 

石井:なるほど。夜に安い電気を買って貯めておいて、昼間に使うということですね。そのほかに日産として、リーフの今後の展望はどのように考えていますか?

 

門田:お客様からフィードバックがきています。それらを真摯に受け止めてリーフの商品力を向上したいと…。例えばITで、ナビゲーション上で充電箇所を見つけるのが手間だとか、こんな階層深くまで入れないでほしいとか、そういった声を真摯に聞きまして、日々改善努力をしています。

 

石井:桂さんも使いました? スマートフォンとか?

 

:同じように経験したというか、ユーザーと同じことを言いました。日産広報に(笑)

 

石井:リーフは桂さんが言うように、気持ちよくて、楽しいんですが、課題がまだまだあるということで、今後の展開に期待しています。

 

石井:あっという間のエンディングですが、桂さん、11月3日はサーキットでまたリーフに乗ることになりそうですね。

 

:筑波サーキットでEVフェスティバルがありますからね。去年も乗りましたけど、また今年も乗せていただきます。

 

石井:意外とボクら(そういう時は)アクセルを踏んでいるんで、あんな機会は滅多にないので、他のEVとどっちが早いとか密かに比べていますよね?

 

:そうですね、走りが良いのでね。門田さん、ボクも普段乗っていた時に走りは良いのと、乗り心地の良さもずいぶん感じました。

 

門田:ありがとうございます。(冒頭申し上げたように)開発の当初から今日は50kmくらいしか走らないから、どっちのクルマにしようか選ばれる時に、必ずリーフを選んで欲しいなと。それくらい性能の良いクルマをつくらないと、なかなか電気自動車は普及していかないよね、という思いも込めて作ったので、ぜひサーキットでもリーフの良さを味わっていただきたいと思います。

 

石井:あと(リーフの)レーシングカーであるニスモRCも見られるんですよね?

 

リーフのレーシングカー(プロトタイプ)であるニスモRC。車体はカーボンコンポジットモノコックで、車両重量も925kgと市販モデルと比べて約600kg弱軽いなど、見た目にはリーフとはまったく別物となっている

 

門田:そうですね。リーフと同じバッテリー同じモーター、インバーターを載せて、こちらはリア側に駆動輪を持ってきていますが、重量配分は前後40:60で私も乗りましたけど、とっても面白くて楽しいクルマですね。

 

石井:では、11月3日は筑波サーキットのEVフェスティバルでリーフ及びリーフのレーシングカーも見られてしまうということです。門田さん、桂さん、本当に今日はありがとうございました。

 

門田:ありがとうございました。

 

:ありがとうございました。

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