【VW】フランクフルトモーターショーでVW「up!」がワールドプレミア
2011年9月13日、フランクフルトモーターショーで、フォルクスワーゲンの革新的なスモールカー「up!」がついに正式発表された。ヨーロッパでの発売は、今年の年末とされている。
このup!は、2007年のフランクフルトモーターショーにコンセプトカーとして出展されて以来、東京モーターショーではミニバン版の「Space up!」、ロサンゼルスオートショーでは「Space up! Blue concept(水素エンジン+モーター版)」、2009年のフランクフルトモーターショーでは「e up!(EV)」などの派生コンセプトを展開してきたが、量産版として今回ワールドプレミアが行われたのだ。
微笑む表情を持つup!は、未来を見据えた新しいパーソナルカー像を実現したものだ。したがって単なる価格の安いコンパクトカーではなく、新たなライフスタイル、新たなユーザー層を意識したもので、最廉価モデルは100万円を切る価格設定にもかかわらず、チープなクルマではなく、新しいライフスタイルをプレゼンテーションし、VWブランドのコアバリューを代表する商品と位置づけられている。
ボディサイズは全長3540×全幅1640×全高1480mm、ホイールベースは2420mm。日本の軽自動車よりわずかに大きいだけの超コンパクトボディで、大人4人乗りのパッケージを実現。そして車量重量は929kgと1トンを切っている。
このボディを実現するため高張力鋼板、超高張力鋼板の使用率は56.5%に達し、ホットプレスが8.1%だという。さらに、きわめて軽量なボディにもかかわらず、静的ねじれ剛性は1万9800Nm/rad(*)と、このクラスのトップを実現し、剛性の高さ、静粛性などもこれまでの常識を打破しているという。(*radはねじれ角)
エンジンは新開発の3気筒999ccをフロント横置きに搭載する。エンジンの仕様はガソリンが60psと75psの2種類。他に天然ガス、ディーゼルがラインアップされている。もちろんスタート&ストップを含むブルーモーションテクノロジーを採用している。
ガソリンエンジンはDOHC12バルブでポートインジェクションを採用し、60ps、75ps版ともに95Nmのトルクをワイドレンジで発生する。燃費は60ps版で4.2L/100kmというスペックだ。
トランスミッションは新開発で、5速MTはわずか25kgという軽量設計になっている。またAMTも選択できる。
up!は装備面でも革新的だ。レーザーセンサーを採用したシティエマージェンシーブレーキを装備し、市街地などでプリクラッシュ制御、自動ブレーキ機能を持っている。コンパクトクラスでは画期的な装備と言えるだろう。
バリエーションはエントリーグレードの「take up!」、 快適仕様の「move up!」、フル装備仕様「high up!」の3種類。なおヨーロッパではオートクレジット2と呼ばれる、自動車保険など総経費を組み込んだ専用クレジット販売が採用されて、誰にでも購入できる魅力を加えているあたりは往年のKDF(VWビートルの原型)を想像させる。また専用アクセサリーも充実していて、多彩で夢のあるライフスタイルをプレゼンテーションしているのもup!ならではの特徴だ。
また今回のフランクフルトショーでは、up!の楽しさや、今後のロードマップを示すコンセプトモデルの「バギーup!(オープンボディ)」、海、マリーナをテーマにしたジウジアーロとデ・シルヴァがコラボしたオープンモデルの「up! azzurra セーリングチーム」、都市生活者のための4ドアモデル「cross up!」、GTIを示唆するスポーツモデルの「GT up!」、天然ガス仕様の「eco up!」、EV仕様の「e-up!」も出展された。
「cross up!」、「eco up!」と「e-up!」の3台は、すでに量産版の完成が間近なモデルと考えられる。事実、up!は2013年にはEVモデル、すなわち「e-up!」の発売も示唆しているので、今後さらに多様な展開が期待できそうだ。
なお、テクニカルな面も含めたup!の詳細情報は別途掲載の予定だ。