【VW】1.4Lの TSIエンジンに気筒休止システムを採用し、さらに燃費をアップ
2011年9月6日、フォルクスワーゲン は2012年の初頭から、同社の主力エンジンである1.4LのTSIエンジン(140ps仕様)に気筒休止(シャットオフ)システムを採用すると発表した。
このシステムは低負荷から中負荷運転時に、4気筒のうちの2気筒を一時的に停止することによって、燃費を大幅に向上させることが目的だ。その手法の ポイントとなるのは、2気筒での運転時は、4気筒の運転よりスロットル開度が大きくなり、運転している2気筒の負荷が大きくなることでポンピング損失を低 減できるところにある。
この気筒休止システムを搭載した1.4TSIはNEDC(新欧州ドライビングサイクル=欧州の新燃費測定方法)で、100kmあたり0.4Lの燃 料、8g/kmのCO2を削減できるとしている。さらに、このエンジンにニュートラルギヤでエンジンが停止するアイドリングストップシステムを組み合わせ た場合は、最大で100km あたり約0.6Lの燃料削減が可能としている。
この技術は、一定速度で巡航している場合にもっとも大きな恩恵を得ることができる。 たとえば、3速または4速ギヤを使用して50 km/hで走行している場合、100kmあたり約1 Lの燃料を節約でき、また、5速ギヤで70km/h巡航した場合は同じく100kmあたり0.7Lを節約することができる。 これにより、TSIエンジンは将来施行されるEU-6 排ガス基準を難なくクリアすることができるのだ。
そして、4気筒から2気等への切り替え時や2気筒で走行している場合も、この1.4LのTSIは静粛性に優れ、振動も抑えられているなど、高い効率 と快適性をともに実現する。この気筒休止システムは、1.4TSI エンジンの回転数が1400rpm~4000rpm、トルクが25Nm~75Nm の範囲内にあれば作動し、 これは、NEDC測定のおよそ70%の走行領域を占めている。
作動原理はスリーブ内でスライドするゼロリフト・カムの存在
気筒休止システムの作動の実際だが、ドライバーが大きくアクセルペダルを踏み込むと、停止中の2番と3番シリンダーは再び瞬時に動き始める。つまり アクセルペダルセンサーからの情報によりドライバーの運転モードを検知するわけだ。また、運転パターンが不均一な場合、つまり交差点やロータリーを通過 中、郊外でスポーティなドライブモードの場合などにはこのシステムは作動しない。なお、フォルクスワーゲンは、このシステムは大量生産されている直噴・4 気筒ターボ過給用としては世界初としている。
この1.4LのTSIエンジンの気筒休止システムのメカニズムは、第2、第3気筒の吸排気カムシャフトに可変スリーブ&スライド機構を持 ち、通常のカムプロファイルと、ゼロリフト・プロファイルを切り替えるようになっている。可変スリーブの作動はらせん状の溝にピンが挿入されることで瞬時 に、数ミリだけスライドし、ロックボールで固定されるようになっており、これはアウディが採用している可変バルブリフト機構と同じ仕組みである。カムの機 械的な切り替え時間は13mm/sec~36mm/secで、タイミングはその時のエンジン回転数によって変わってくる。
気筒休止の切り替え時には同時に、点火時期とスロットル開度コントロールが自動的に行われ、トルクショックを発生しないようにしている。通常の4気 筒運転時は、ノーマルのカムがローラーカムフォロワーを作動させ、2気筒を気筒休止させる場合はスリーブがスライドしてゼロリフト・カムに切り替わる。そ のため、吸排気バルブはバルブスプリングの力により閉じたままとなる仕組みだ。同時にエンジンECUの指令により、2番、3番気筒の燃料噴射は停止される というわけだ。ちなみに、この気筒休止システムのトータル重量は3.0kgである。
気筒休止は他社でもトライしている
気筒休止(可変排気量)エンジンは、1981年のキャデラックV8型エンジンが世界初とされ、1982年には三菱が4気筒の気筒休止システムを採用 したMD型エンジンをミラージュに搭載している。三菱はその後、4気筒エンジンに加えV6型エンジンにも気筒休止システムを採用しMIVEC-MDと呼称 した。
これ以外にメルセデスベンツの12気筒エンジン、ホンダのシビックハイブリッド、同じくホンダのインスパイアのV6型エンジンにも採用(呼称はVCM)している。このエンジンはエリシオンや、アメリカ仕様のオデッセイなどに採用されている。
このように、気筒休止システム自体は目新しくはない。がしかし、VWの場合は、最新のエンジンのため徹底したフリクションの低減が行われているこ と、従来のポート噴射式では難しかった正確な燃料制御が直噴システムにより可能になり、さらに気筒休止システムの制御ソフトウエアを大幅に進化させること で、よりすぐれた気筒休止システムが実現できたわけだ。このため、VWでは大量生産の4気筒ターボ過給エンジンでは世界初の気筒休止システムの実現と自負 している。