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第223回放送『ニュルブルクリンク24hレース』


第223回


全体に底上げされ、
もはや草レースとは呼べないレベルのニュル24時間レース

 

岩貞:今週はドイツで開催されたニュルブルクリンクレースを特集していきます。われらが桂伸一さんもこのレースに出場していたのですが、結果はクラス6位で見事完走です。レースお疲れ様でした。

 

:はい、どうも。こんにちは。あの〜、今年もアストンマーチンに2年ぶりですけど、乗れて、結果6位ですけど、クラス優勝目指していたんで、その意味では不本意なんですけどね。

 

岩貞:悔しいですか?

 

:はい。もちろん。

 


岩貞:そして今回はもうひとりスペシャルゲストにお越しいただいています。レーシングドライバーでありモータージャーナリストでもある佐藤久実さんです。

 

久実:こんにちは、よろしくお願いします。

 

岩貞:久実さんもニュルのレースにはたくさん出場していますよね。

 

久実:そうですね、ニュル24時間は過去5回出場しています。

 

岩貞:今回も?

 

久実:今回は残念ながら出場していません。VLNという年間10戦あるニュルのシリーズ戦があるんですけど、5月と6月、そちらにレクサスのハイブリッドカーCT200hで出場してきました。

 

岩貞:桂さんは久実さんと耐久レース組まれていたんですよね?

 

: そうですね。ボクが所属していたプローバというチームにいた頃、レースを始めるという女子大生のときに知り合っています。だから、レースデビューから知っ ているんですけど、そのあとジャーナリストもやり、世界にも行き、ニュルでは我々の中では一番先に彼女が行ってますから、彼女に教わったぐらい。まあ、凄 い方です。(笑)

 

岩貞:桂さん、久実さんはどういうドライバーですか?

 

:レースに関して、また、ジャーナリズムに関してうるさい親分、清水和夫というのがいるんですけど、その方にこっぴどく怒られながら教わったので、まあ、彼女は基礎がしっかりしていますね。

 

岩貞:久実さんからみて、桂さんはどういうドライバーですか?

 

久実: そのうるさいオヤジにつづいて、桂さんとは昔グループAというレースで組んだことがあるんですが、まぁ、ちょっとはマシでしたけど、そうとう厳しかったで すね、当時は。(笑) その、こっぴどく怒るオヤジとダブルで起こられながら育ちました。(笑)今は、とてもいい仲間であり、先輩であり仲はいいんです よ。

 

岩貞:今日はこのお二人と一緒にお話を進めていきましょう。さて、桂さん、今週はニュルのレース報告ですが、ビッグニュースがありましたね。

 

:ありましたねぇ。

 

岩貞:先日スタジオにもお越しいただいた辰己英治監督率いるSTIインプレッサがクラス優勝しました。

 

: これね、すばらしいことなんですよ。常勝するポルシェだとかBMW、アウディ、それに加えてメルセデスのSLS AMGとフォルクスワーゲンがこのクラス に参加し、つまり上位が一気に増えたんですよ。ということは、30台〜40代は頭の方にいて、辰己さんのとこは総合で21位ですから、250台中の、しか も、速いマシンが30台〜40台いる中での21位というのはいかに凄いかということですね。

 

岩貞:クラス優勝も凄いけど、総合21位もすばらしい。

 

:それが凄い。

 

久実: 実は、05年にインプレッサが初めてニュル24時間に出たときに、吉田君と組んで走らせていただけたんですね。その後2年間はお休みしたんですけど、08 年に復活して、それからはずっと継続して活動をしての今年の優勝ですから、やはり、自分も一度関わったことがあるクルマだけに凄いなと思うし、継続するこ とのすばらしさ、強さというのを感じますね。

 

岩貞:毎年毎年出るということが、いろんなデータを積み重ねていくということになるんですよね。

 

久実:そうですね。

 

:それと、毎年出続けるということが、向こうのチームからも、主催者からも受け入れられるようになるんですよ。

 

久実:そういうのもありますよね。

 

岩貞:そういうところが大事ということですね。

 

:それも大事ですね。日本はなんだってすぐ止めちゃうから。

 

久実:(笑)
岩貞:(笑)

 

岩貞:今回のインプレッサのドライバーは吉田寿博選手、佐々木孝太選手、カルロ・バンダム選手、そしてマルセル・エンゲルス選手ということですが、実はその吉田さんとお電話がつながっているので、お話を聞いてみましょう。「もしもし・・・・・・」

 

吉田:もしもしこんにちは。

 

岩貞:吉田さん優勝おめでとうございます。

 

吉田:ありがとうございます。

 

岩貞:こちらのスタジオには桂さんと佐藤久実さんがいますので、お話をお願いします。

 

:いや〜、おめでとうございます。すばらしい。パドックに行くと調子良すぎて気持ち悪いくらいだなんて言ってたけど。

 

吉田:そうですね。今年は本当に、決勝はノートラブルでびっくりしています。

 

:うまくいくときって、こういうことだよね。

 

吉田:そうですね。これを目指して何年もやっている感じですよね。

 

久実:ヨッシー! 体力はぜんぜん問題ないの?

 

吉田:そうなんですよ。今年はクルマが結構乗りやすくて、なんだろうな・・・・・・ドライバーの力を100%出さなくてもコンスタントに走れるような仕上がりだったので。

 

:へ〜

 

吉田:楽じゃないんですけど・・・・・・・

 

久実:なんだかわかる。乗りやすいクルマって楽に走れるもんね。

 

吉田:そうなんですよ。

 

久実:ちなみに去年から今年にかけて、5ドアから4ドアになって、中身も凄く進化しているんですか?

 

吉田:そうですね。優勝目指したクルマ造りで、軽くなったりしているんで、あと、エンジンにも手を加えたり、タイヤもチョット太くなってトレッド面が広くなって、といろいろ改良はしていますね。

 

久実:なんかいい事尽くめみたいだけど、実は苦労したとか、辛かったとか、なんかそういう裏話はないの(笑)

 

吉田:実は、金曜日の予選が終わったときは緊迫した雰囲気だったんですよ。というのは排気温度が高くて、その原因がつかみきれなくて、メカニックの人たちは朝までかかって、修復してたんですよ。

 

:決勝の?

 

吉田:そうです。

 

:ということは、メカは何時間寝てないんだろうね?

 

吉田:ほとんど寝てないんで、ドライバーもへんなミスを犯したり、事故をもらっちゃったりといことを、とにかくなくそうとドライバー4人で話をして、メカのその働きを結果で、みんなで優勝をもぎとろうという感じでした。

 

:チームの統制が取れていたんですね。ひとり当たりは何時間乗るの?

 

吉田:1時間半弱ですね。

 

:それは燃費の関係で?

 

吉田:そうです。ガソリンは満タン、満タンでいって燃費上、1時間25分程度ですかね。

 

岩貞:吉田さんリスナーの方も本当に喜んでいるんで、リスナーの方へメッセージをお願いできますか。

 

吉田: スバルSTIとして長く続けられたことが、今回の優勝につながったと思っています。本当に日本で応援してくれてた人も多かったのは知っているので、なんと かその声援に応えたかったし、みんなで優勝をもぎ取りたかったなぁって思いました。また、日本だけでなく世界中のスバルファンの人に喜んでいただけたかな と思っています。今年は優勝できましたけど、来年はまた、厳しい戦いになってくると思うので、みなさんの応援があればスバルも小さい会社ですが、勝てると 思います。ぜひ応援してください。

 

岩貞:STIインプレッサのドライバー吉田寿博さんでした。どうもありがとうございました。

 

:どうもありがとう。

 

吉田:ありがとうございました。

 

岩貞:そして、辰己監督からはコメントをいただきましたので、読ませていただきます。
コメント:「24時間レースという距離、コースの特殊性、一般路に近いサーキットという条件の中で、当然勝機はあると睨んでの挑戦です。でも、敵はFFで軽量。ウチの4WDより100kg軽いので不利と読んでいましたが、必ずしもそうはならなかった。」

 

: いや、そうなんですよ。今年はスタート直前まで雨で、路面状況がホントに滑りやすいんですね。ただ滑りやすいだけでなく、2輪だとかクルマから排出される オイルが染み付いていて、それが雨で浮きあがって、歩くのも滑るくらい非常に滑る路面なので、そこで始まったレースだったもんですから、その、インプレッ サの4WDの性能で、グイグイ前に行けたんだと思いますね。

 

岩貞:はい。続けて読ませていただきます。
「スバルのAWDの優秀性が証明されたと思います。また、勝因は、最後は人、かな。総合力。どうしても勝ちたい、世界一になりたい、とどれだけ強く思い続 けられるか、監督からメカニックにいたるまで、その総合力かもしれない。」ということです。

 

岩貞:やはり、最後は気持ちですか?

 

:いや、気持ちは一緒ですよ。どこのチームも。

 

岩貞:久実さんはいかがですか?

 

久実:いや、そのとおりで。気持ちで勝てるんだったらね、レースは苦労しないですよね。

 

:だから、マシンを含めた総合力ということですよね。

 

岩貞:ところで、日本のトップドライバーでもニュルを走ったことがある人は少ないのに、久実さんは経験豊富ですよね?

 

久実:ニュルに限って言えば24時間に5回ほど出ていますし、ここ数年はシリーズ戦のほうに、スポットで出させていただいてますので、日本でみれば、走行周回は多いほうかもしれません。

 

:われわれドライバー仲間で一番先にニュルに行ったのは、久実ちゃんですから。

 

久実: 私、今でも覚えているんですけど、本当に成田空港で涙が出てきて、ひとりで海外旅行も行ったことなかったのに、 いきなり、ひとりで行って来いって言われ て、ありがたかったけれど成田で涙がチョチョ切れ〜の、ニュルを初めて走ってまた、そこで涙が出てきて・・・・・・・・なんで泣いたかというと、こんなと こ24時間走れるわけないじゃんって! このままお家に帰りたい! って思ったんだけど1周25kmもあると涙も途中で枯れ果てるんですよね(笑)

 

:(笑) それも、単独でドイツのチームだかなんだかの屋根裏かななんかに泊めてもらったんだよね?

 

久実:そうそう、屋根裏に泊めてもらって、朝起きるたびに頭をぶつけて目から星が散って、B&Bみたいなところに泊まって、コミュニケーションは英語で! っていう・・・・・・

 

:いや〜、男らしかったんですよ(笑)

 

久実:若かったんですね(笑) あのときパワステがないのに、1スティント3時間ですよ。それを私3スティント行きましたからね。若かったんだなぁ(笑)

 

:おなじクルマを日本で乗るのに、ハンドルが重いからって僕が組まされ、僕がレース距離の2/3行かされ、久実ちゃんは1/3だったでしょう?

 

久実:そうそう、で、いつも体力つけろ! って怒られていたんですよね。

 

:その重たいハンドルのクルマを、どうしてニュルで3時間も乗れたわけ?

 

久実:うん? 言葉の壁で乗れません! って言えなかったから・・・・・・(笑)それは冗談ですけど、ニュルは舵角が少ないから。日本の箱庭みたいなサーキットじゃないですか・・・・・・

 

:そうだね。路面にあまり設置していないからね。(笑)ポンポンはねているしね。

 

久実: グランプリコース。リスナーの方もF1見たことがあると思いますけど、グランプリコースはギューッとまわり込んだヘアピンがありますけど、あれはアウトイ ンアウトは取れないんです。あれはアウト・アウト・ダート・アウトみたいなカンジで、少ない舵角でまわるんですね。(笑) で、いわゆるオールドコースと 言われているのはいっぱいハンドルを切るところがないので、なんとか歯を食いしばって、ハンドルの重さに耐えたんですよ。

 

:そこで今年初めて、レクサスのCT200hなんですが、どうしてレクサスなんですかね?

 

久実: トヨタは環境対応としてハイブリッドで行くと宣言しましたよね。なので、レースもチョットやってみようか? という試みがあったみたいですね。で、走らせ てみたんですけど、ハイブリッドシステムって重いじゃないですか。だから、そういう意味では残念ながら速くはなかったんですね。びっくりしたのは、桂さん も走って感じたと思うんですけど、GT3規格車両が増えて、全体的なレベルがものすごく上がっているじゃないですか。

 

:ハイ!

 

久実: 私3年前に4時間レースに出たんですけど、その時のラップタイムと、そう変わらないんですよ。そのときはちゃんとレースできていたんですよ! ところが今 年、ふっと気付いたら予選でビリでえ! みたいな、どうして?って、それだけまわりのタイムがこの3年であがったというのがビックリでしたね。

 

:今年、ボクが乗ったアストンマーチンはV8は同じなんですけど、従来は4.3Lだったのが4.7Lになったんですね。それで、直線は楽勝で270km/h出る。

 

久実:そんなに出るんだ!

 

:280km/h 近く行くんですけど、確かにアストンマーチンはロードカーのままで、ちょっと改造しただけでどれだけ戦えるか? というのをみせているので、コーナーは純 粋なレーシングカーに比べればそんなに速くないんです。とは言え、直線280km/hは超える車なんで・・・・・・

 

久実:十分速いですよね。

 

:十分速いでしょ? それが1周の間に何回抜かれるか。もう、ルームミラー見っぱなし。これはニュルに出はじめたとき、2.0Lクラスのクルマだったりしたんだけども、その時の感覚とおんなじなんですよ。

 

久実:それだけ速いクルマが増えた 。上のクラスのクルマが多くなったということですよね。GT3企画が凄く影響していますよね。

 

:してますね。だからその上位の争いが、上位は上位で凄いケンカをやっているわけですよ。そこに下位や中位がバトルをやっていると、そこに追いつかれたりするので、まあ、本当に今年は接触事故が多かったんですよね。

 

久実:速度差が大きいからね。

 

: 速度差が大きいから、後ろから来ていてもまだ平気だろうと思ってスッとインに寄ったら、実はもうそこにいた! ということとかね。まるでルマンのマクニッ シュみたいに観客席に向かって飛び込んでいくような、あんな感じの事故もあったんですけど、たまたまそこには観客席はなく、フェンスだけだったので、助か りましたけど、まあ、こういう事故が今後増えそうな気がしますね。

 

久実:ギネスブックに参加台数の多さで載っているじゃないですか。で、世界最大の草レースと言われてきましたけれども、今年走って、もはや草レースじゃなくなちゃったかな? っていうのが、見ている人には速いクルマは楽しいと思うんですけど、ちょっと複雑な心境でしたね。

 

:主催者的にも草レースじゃなくてメーカーを意識した体質に変わってきていますね。だから、パドックを見ていても各メーカーのブースが多かったりしますからね。

 

岩貞:話は尽きないようですが、あっという間のエンディングになりましたが、桂さん、今回参戦した完走をひと言で。

 

: はい。まぁ、こんな世界一チャレンジングなコースで走れるのは、ニュルをおいて他にないので、参加できる可能性のある方は、どんどん、行きましょうよ!  って言っていたんですが、今年出てみて、メーカー系チームがドカっと上に来たもんですから。あまりの速度差にかなり危険を感じているんですよ。ちょっと今 まで思ってきたニュルとは少し違ってきたなぁ、って思います。

 

久実:それは、だれよりも私が。私は一番うしろのグリッドからスタートしましたからそれを実感しましたけど。逆に言うとニュルを走ってみて、クルマの絶対スピードは遅いですが、6時間の耐久レースで最後尾から83位順位をあげたんですよね。

 

岩貞:すご〜い!

 

久実:だからダメもとでギネスに申請してみようかな? って思っているんですけど、これぞ耐久レースの醍醐味だと思っているんですね。雨が降ろうがスリックで淡々と走り続けた結果、みんなで勝ち取った結果だったと!

 

:でも、それはみんなには進められないね(笑) スリックで雨っていうのは。

 

久実: 普通の人には勧めませんけど、順位アップに繋がったというのは耐久レースの楽しさだったし、久しぶりにニュルのコースを走って、やっぱり、ここのこのコースチャレンジングだし、自分にとっても終りのないチャレンジだと思うし、ニュルは個人的には何度でも走りたいなと思いました。

 

:いやいや、それは僕だって思ってますよ(笑)

 

久実:(笑)

 



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