ザ・モーター・ウィークリー | クルマ好きのパラダイス The Motor Weekly ザ・モーター・ウィークリー | クルマ好きのパラダイス The Motor Weekly

第209回放送『 電気自動車 』


第209回


『電気自動車は巨大な充電式乾電池だ?!』


 

岩貞:4月、はじまりの季節です。番組も新しいス タジオに引っ越してきました。気持ち新たにお届けしてまいります。このザ・モーターウィークリーはなんと37年目を迎える超長寿番組です。話題のクルマの 情報を中心に3名のモータージャーナリストを週代わりでお迎えして、バッサ、バッサといろんな角度から切っていただきます。そのコメンテーターをしてくだ さるMJは、私も大好きな往年の名レーシングドライバー津々見友彦さん、そして運転技術に裏打ちされた的確な解説の桂伸一さん。さらにエコドライブから レース、海外事情まで幅広く活動する石井昌道さんです。今日は、石井昌道さんと一緒にお届けしてまいります。

 

石井:よろしくお願いします。新しいスタジオで緊張感違いますねぇ。

 

岩貞:まずは、みなさんと気持ちを共有しておきたいなとおもうのですが、震災被害のみなさんへ向けてですね。

 

石井: 毎日ニュースを見ていて、涙しない日はないですよね。それで、自分にできることは何だろうと常に考えているのですが、僕の場合、クルマの専門家ですし、エ コドライブ・インストラクターですので、今、ガソリン不足ですから、どうしてもクルマを使わなければならない、という方のために、そのエコドライブが有効 ですとお伝えしたいですね。それで、ワンポイントとしては、エアコンの使い方。エアコンは燃費が悪くなる可能性が高いです。ですから、いつもつけっぱなしという人は止めたほうがいいです。状況に応じて、オンオフを使い分けたほうがいいですね。ただ、ヒーターは燃費を悪くしません。熱の有効利用なので是非 使ってください。ただACのボタンわかりますかね? あれが燃費を悪くするので、ACをオフにしてヒーターをオンにするといいです。

 

岩貞:ぜひ、みなさんもエコドライブを心がけてくださいね。それでは石井さん、今日のお題をお願いします。

 

石井:電気自動車です。

 

岩貞:なぜ、今、電気自動車?

 

石井:個人で買えるようになりましたよね。昨年三菱のアイミーブ、日産のリーフが発売されました。僕達も色々試乗してきまして、今日は日産リーフについてお送りしたいと思います。

 

岩貞:リーフでましたね。

 

石井:EV専用車ですよね。アイミーブの場合は、軽自動車のアイミーブをベースにEV化したクルマ。リーフは最初から電自動車として造ったクルマです。

 

岩貞:専用設計で日産が社運をかけて。気合入ってますよねぇ。

 

石井:気合入ってます。2020年にEVは乗用車の5%ぐらいになる、と言っている人が多いんですが、日産は10%と言っています。

 

岩貞:電気自動車はすごく興味のある方も多いと思うのですが。これ、もう誰でも買っちゃっていいんですか?

 

石井:そこ、ちょっと難しいですね。いいところ、デメリットもあるので、そのあたりを全部理解して、納得したうえで、なおかつ欲しいという人にはぜひチャレンジして欲しいなと思います。

 

岩貞:では、デメリットから教えていただけますか。

 

石井:デメリットというほどではなく、課題ですね。航続距離。あんまり長距離走れないんですよ。一回の充電で。リーフの場合はカタログ上200kmと言っています。状況がよければ200km走れますが、カタログの燃費が出ないというのは普通のクルマでもありますよね。

 

岩貞:みなさんも経験していますよね。

 

石井:いろんなテストをしてきたのですが、最悪の状況だと半分ぐらいになっちゃいます。

 

岩貞:100km

 

石井:100kmと思っておけばまず、間違いない。

 

岩貞:でも、通勤に50km使っている方だったら問題ないですよね。

 

石井:そうなんです。一日100km走れれば、90%以上の人は用が足りるんですよ。

 

岩貞:特に女性は、近所に買い物とか幼稚園のお迎えなどが多いでしょうから、ほとんど大丈夫なんですね。

 

石井:そういうふうに考えられれば、十分使えるクルマなんです。例えば、毎週ゴルフに行くという人で、片道100km以上あるとか、長距離移動を頻繁にする人には向かないですね。やはりそれは、ガソリンでありディーゼルのほうが向いてます。

 

岩貞:ということは、長距離ではなく、短距離ばかりであれば買ってもいい。

 

石井:そういうことになりますね。

 

岩貞:あと、充電というのがネックになると思いますが。

 

石井:自分のガレージにコンセントがないとちょっと買えないですね。

 

岩貞:マンションの方とかは難しいですかね?

 

石井:それは大家さんと相談ですかね。今後、EVは少しずつ増えますから、導入してくださいという感じですよね。そんなに工事費かからないらしいです。技術的に難しいことは全くありませんし。自動販売機の設置用の電源を引くのと同程度と聞いています。

 

岩貞:なるほど、そこがクリアできればヨシ! ということですね。ではメリットについて教えてください。

 

石井:クルマ自体が凄く良くて、乗ると本当に気持ちいいですよ。これ、個人差ありますけど僕が初めてEVに乗ったときは、もう瞳孔開いちゃうくらいびっくりしました。

 

岩貞:何がそんなに、石井さんに刺さったんですか?

 

石井:トルクの出かたが普通のエンジンと全く違うんですよ。低回転から力がある。発進した瞬間からグッグーっと力強いトルクで押されていくんですね。

 

岩貞:試乗した一般ユーザーの方が、飛行機が加速するときの加速感に似ていると。

 

石井:それはシームレスかつ力強いということですね。非常にスムーズで滑らかなんですね。

 

岩貞:しかもモーターですから静かですよね。

 

石井:そうなんですよ。全く音がなくて。無音で力強いってなんだろうな?ッて考えたら実は、超高級車が目指しているエンジン特性に似ていますね。

 

岩貞:あ〜!そうですか。

 

石井:ロールスロイスとかね。昔から超高級車に求められる特性というのは、静かで力強くて、スムーズでまるで電気モーターのようにというのが要件なんですよ。

 

岩貞:それがリーフのようなコンパクトカーで体験できる。

 

石井:もうV12気筒以上の高級感があるわけですよ。

 

岩貞:超高級車ということは、10000万円ではなく、3000万円、4000万円クラスということですか。

 

石井:そう、それがリーフでも味わえる。三菱アイミーブなんて軽自動車でそれが味わえるんです。

 

岩貞:もう、クルマの下克上時代ですね。あと、いろいろな音がするという話も聞きましたが。

 

石井:低速域で、あまりにも無音だと、歩行者が気付かなくて危ないですよね。そこで20km/h以下だと音を出すようにとかはやっています。

 

岩貞:あと、エンジンスタートボタンを押したときに、普通はエンジン音がしますけど、そのあたりは?

 

石井:そうなんですよね。電気自動車はエンジンをかけるのではなくて、ボタンを押してシステムをオンにするんです。

 

岩貞:それはかかったカンジにならないですよね。

 

石井: なんないですね。これを日産リーフは解消しているんです。ボタンを押した瞬間にスタートアップサウンドが鳴るんですね。ただ、これを鳴らすためには、専用 の回線があります。普通はオーディオの機能を使って出せばいいじゃないですか。ただ、コレですと、タイムラグがかなりあるんです。オンにしてからナビとか が立ち上がって数秒たってからポン!と音を出せるんですね。それだと、ちょっと実感がないので、専用の回線をつけてボタンを押した瞬間に音がなるようにし ているんです。

 

岩貞:石井さんにその音を録ってきてもらったのでちょっと聞いてみましょう。


岩貞:とっても未来的な音ですね。

 

石井:ぼくはこれをパソコンのマッキントッシュに近いな、と思ってるんですね。

 

岩貞:石井さんってマッカーですか?

 

石井: ボクはウインドウズも両方使います。ウインドウズはスイッチを押してから「ようこそ」って出るまでサウンドが鳴らないんです。少し時間かかるんです。で も、マックはボタンを押した瞬間にスタートアップサウンドが鳴るんですよね。これもやはり、別の回線を使っているんです。リーフはそれとおなじような考え 方ですね。

 

岩貞:はい。良く分かりました。

 

 

タクシードライバーへ突撃インタビュー

 

岩貞:あの、石井さん電気自動車の場合、充電は自分の家でやればいいんですよね。

 

石井:そうです。だけど、たまに間違えているのか、勘違いされている人がいるみたいですが、基本は家で充電します。それで、街中に急速充電スタンドというのがありますが、あれはチョット足りないときとか、エマージェンシー的なことなんですね。

 

岩貞:自分の家のまわりに充電ステーションがないからといって、ダメなわけでなく、自分のお家には電気はあるので、それでいいということですね。

 

石井:そういうことです。ですから、もう、ガソリンスタンドに行く必要はないです。

 

岩貞:このリーフはすでに販売されているので、いろいろ使われているようですね。

 

石井:そうなんです。たまたまなんですが、試乗会の日にリーフのタクシーを見つけたんです。

 

岩貞:タクシー会社導入早いですね。それで突撃インタビューをされたとか?

 

石井:はい、突撃でインタビューしました。

 

岩貞:では、早速インタビューを聞いてみましょう。

 

 

【インタビュー】

 

石井:リーフの試乗会で今、神奈川県の観音崎まできたのですが、たまたま京急中央交通というタクシーを見つけました。リーフが3台も並んでいます。早速、お話を聞いてみましょう。

 

タクシードライバー:京急中央交通の岩崎フミヒコといいます。

 

石井:どうですかリーフに乗ってみて。

 

タクシー:そうですね、フィーリングとか申し分ないですね。業務目的で乗っているので、利用目的がチョット違いますが、一般ユーザーが乗るのであれば、僕はアタリだと思います。

 

石井:航続距離はガソリンやLPGより少なめなので、そのあたりで何か工夫とかされていますか?

 

タクシー:う〜ん。アクセルを踏み込みすぎない。それから坂道は極力避けたい、平地で40km/hから50km/hの走行でしたらうまくすれば、航続距離が伸びますので、自分がそれを取得できれば十分こなせるクルマかなとおもいます。

 

石井:ありがとうございました。

 

 

岩貞:ものすごい突撃インタビューでしたね。

 

石井:この方凄いんですよ。エコドライブのこと髄分と語ってくれて、僕が番組で言おうかな? と思っていたこと全部言ってくれました。(笑)

 

岩貞:京急沿線ですと、航続距離の話もありましたが、駅から自宅までという方も多いので・・・・・・

 

石井:そういうタクシーの使い方にはバッチリですね。だけど、横浜にいて「成田空港まで」というおいしい話があっても行けないというのが悩みといえば悩みですよね。

 

岩貞:そうですね。そういうところは使い分けしていければいいですね。こうしてEVはだんだんと普及し始めているのですが、電力に関しては震災もあり、いろいろと複雑になってきていますよね。

 

石井:節電しなければいけないのはもちろんなんですけど、一番の問題は電力の需要ピーク。

 

岩貞:だいたい夕方の6時から7時。

 

石井:そうでうね。それをはずして充電すればいいわけですよ。

 

岩貞:なるほど。

 

石井:例えば、深夜とか、需要があまりないときに充電してあげれば問題にはならないと思いますね。

 

岩貞:基本的に電気というのは溜めることができないので、夜間、電力会社が作っている電力というのは、ちょっと無駄になっている。

 

石井: そうですね。ですから、有効利用という考え方もできます。それにガソリン車を走らせるよりも、環境性能は上なんですよ。たとえ石油由来の発電であったとし てもです。ですから、トータルでメリットがありますからリーフ、三菱アイミーブ両方とも、この震災の状況の中で使っていくことは悪いことではないんです。

 

岩貞:今後電気自動車がどんどん増えてくると、街づくりとかいろんなものが変わってきそうですね。

 

石井:いろんなことをこの震災のときに考えていたんですが、EVが果たす役割としてスマートグリッドという言葉がありますよね。

 

岩貞:聞いたことあります。

 

石井:「スマート」は賢い。「グリッド」は電気をつなぐという意味で、賢く効率よく電気を送ったり配ったり、というのをもっともっと高度にやろうということです。

 

岩貞:具体的には。

 

石井:コンピュータ制御をして、例えば家庭の太陽光発電がありますよね。これ、家にこの人がいなければ、発電しても無駄ですよね。

 

岩貞:使われないでどこかにいってなくなる?

 

石井:今は売電するシステムとかありますけども。それをもっともっと高度にしていく考え方ですね。留守宅で発電された太陽光電気を他の必要としている家に送ってあげる。

 

岩貞:なるほど。そこで電気自動車に充電したい人がいたら、それで充電してもらう。

 

石井: 電気自動車はこの充電できるという能力が大きなメリットなんです。電気を溜められるんです。需要ピークが問題になるのは、電気が溜められないからなんで す。だから夏の一番暑い時期に6000何百万Kw必要だといって、その時のためだけに最大発電能力を発電所は確保しなければならないんですよ。

 

岩貞:だから、あちこちにたくさん発電所をつくらなければならない。では、そこが解消できれば・・・

 

石井:ですから電気自動車が増えてきて、スマートグリッドをうまくやれば、夜のうちに電気自動車に電気を溜める。

 

岩貞:もしくは余っているときに電気自動車に溜める。

 

石井:それで、需要ピークのときに、逆にそのためた電気を家庭で利用してあげる。

 

岩貞:すばらしい・電気自動車は巨大な受電式乾電池!

 

石井:そうですね。一日分の家庭の電気はまかなえたりするんですよ。

 

岩貞:いいですね。石井さんとしてはみなさんに買ってもらたい?

 

石井: そうですね、スマートグリッドとセットで考えるのであれば、近い将来、本当にいいことになると思いますね。今は、国のエネルギー政策どうしていくんだろ う? とみなさん不安でしょうけどスマートグリッド化は一定ぐらいなんで、これで全部が解決するというわけではないんですが、これ以上あまり発電所を増や したくない中では、選択肢のひとつとしてあると思います。

 

岩貞:ちなみに石井さん、リーフのご購入は?

 

石井:まだ、買ってないです(笑)

 

 


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